18禁指定を受けた
「胎児が密猟するとき」
Zootrope films
フランスで18歳未満禁止指定が導入されたのは、2000年に公開された「ベーゼ・モワ」がきっかけ。現在までに「シミュレーションではない性描写、または過激な暴力シーン」 のために18歳未満禁止に指定された映画は、 ラリー・クラーク監督の「ケンパーク」やホラー映画の「Saw 3」などがある。「胎児が密猟するとき」は6本目の指定映画になる。
検閲委員会によると、「精神的な暴力」や「女性のイメージを損なう」ことなどが今回の判断の原因とされているが、41年前に日本で公開された映画が、2007年にフランスで18禁指定を受けたという事実は、映画人に少なからぬショックを与えている。作品は、一晩の間に男女間で繰り広げられる密室劇。確かに暴力や性を扱ってはいるが、その描写は「過激」という基準からは程遠い。映画監督協会は、作品がピンク映画を代表する名作であることや、若松監督が「愛のコリーダ」の製作などでも知られている世界的な映画人だということなどを挙げ、検閲に抗議していた。
18禁指定は映画館での上映を困難にするだけでなく、その後のテレビ放映やDVD販売にまでに影響を及ぼしてしまう。配給会社は、この指定を18歳から16歳未満禁止に変えるように、最高行政裁判所である参事院にかけあっているという。
個人プロダクションによってつくられている「胎児が密猟するとき」などのような低予算映画は、巷に溢れる商業的な映画とは一線を画している。作家性の高いオリジナリティーのある作品の未来のためにも、この騒動の成り行きは気になるところだ。今や、ヌーベル・ヴァーグ(新しい波)も遥か遠い昔。新しい表現を求める映画作家たちにとって、現代のフランスは決して理想の地ではなさそうだ。
「Le Monde」紙 "≪Quand l'embryon…≫ est interdit aux moins de 18 ans"