ジャパンダイジェスト

Nr.6 ドイツ人は早寝早起き?(1)

ドイツで暮らしていると、日本よりも毎日の生活が早く始まる気がします。役所に届けを出そうとして受付時間を聞くと8時には開いているし、銀行も早くから開いている日が週に何回かあります。街角のパン屋さんは、6時から焼きたてのパンを売っています。でも、本当にドイツの生活は「朝型」なのでしょうか。

ドイツの総合週刊誌の代表は「シュピーゲル(=鏡)」ですが、ヨーロッパには古くから「世相・人生を写す鏡」という言い方があります(シェークスピアの「ハムレット」にも出てきます)。このシュピーゲル誌が4月半ばの発行号で、統計の数字から「平均的な」ドイツ人像を描き出す試みをしています。

それによると、平均的ドイツ人は、毎朝6時23分に起きて22時47分に寝るのだそうです。どうやら、ドイツの社会は朝が早い、という印象は裏付けられた気がします。4人に3人は朝起きるとまずラジオをつけ、4人に1人は30分以上かけてゆっくり朝食を取ります(日本では、見もしないのに時計代わりにテレビをつける家庭が多く、ラジオを聞く習慣は消えて久しいようです)。通勤には3人に2人が車を使い、電車やバスを使う人は13%に過ぎません。この数字を見ると、満員電車での「痛勤」とは無縁のドイツの生活が透けて見えますし、ドイツのテレビが日本の通勤ラッシュを好んで取り上げる理由もわかります。ともかく、ドイツ人はゆったりと朝を過ごしている印象です。

(C)Sae Esashi

労働時間は、平均すると週30.3時間で、年間に出勤するのは192日。「英国病」といわれた英国人さえ、ドイツ人より25日も多く働き、米国人は46日多いそうです。ちなみに、日本の数字は挙がっていませんでした。誰もが比較にならないと信じているのでしょう。

職場から家に帰ってくると、その家は41%が持ち家で、平均的な広さは117.7㎡(日本では壁の芯から芯で計算しますが、ドイツでは実測です)。借家では70.6㎡です。ベルリンの若い友人夫妻は120㎡のマンションに住んでいましたが、子どもができたら「手狭だから」という理由で、1.5倍ほど大きなマンションに移りました。

月に1度以上は、3%のドイツ人がロックやジャズのコンサートに行き、オペラ、演劇、コンサートに行く人はこの倍、映画はさらにその倍の人が見ます。また、さらにその3倍の39%の人が外食を楽しみます。

こうしてみると、ドイツの生活はゆとりがあって羨ましくなりますが、本当でしょうか。平均的な生活とは何なのでしょう。また、日本の事情を私たちは本当に知っているのでしょうか。次回はこの点を考えて見ましょう。

 
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Koji Ueda ケルン日本文化会館館長
早稲田大学、筑波大学でドイツ文化および異文化交流を担当。NHKのテレビ、ラジオ「ドイツ語講座」元講師。留学や客員教授などを合わせた在独歴は十数年。ベルリン日独センター副事務長(日本側代表)を経て、2007年3月より現職。
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