ジャパンダイジェスト

ドイツの街角から

岩本順子 翻訳者、ライター。ハンブルク在住。ドイツとブラジルを往復しながら、主に両国の食生活、ワイン造り、生活習慣などを取材中。著書に「おいしいワインが出来た!」(講談社文庫)、「ドイツワイン、偉大なる造り手たちの肖像」(新宿書房)他。
www.junkoiwamoto.com

市民がつくるラジオ・テレビ局

TIDE

ドイツでは、1980年代にはいってから、市民の間で放送というメディアがいかに機能し、独自の放送によっていかに多様な思想を伝えることができるかを知るべきとする風潮が高まり、国営、民間放送局にならんで、「Offener Kanal (オープンチャンネル)」とよばれる、市民のつくる放送局が各地でスタートしはじめた。この市民放送局の運営費は、国営放送局の受信料、あるいは各都市の諸団体によってまかなわれている。現在ドイツには 63の市民放送局があり、その多くがテレビ放送を主体としている。

ハンブルクでは、2003年7月にOffener Kanal が一時中断となったが、04年4月から、その後継として「TIDE」という放送局(ラジオはTIDE96.0/FM、テレビはTIDE TV)がスタートした。TIDEは、将来メディア業界で働きたい、ラジオ・テレビ番組の編集を行い、実際に放送したい、という市民なら、年齢を問わず誰でも参加することができる非営利の放送局で、利用者の制限は特にない。開設以来、市民のためのエンターテインメント、異文化発信、異文化交流の場として活用されている。

TIDEを運営しているのは、ハンブルク・メディア・スクール(HMS)という教育機関。同機関は、TIDE アカデミーという実践セミナーも開講しており、希望者は編集技術やカメラワークなどを学ぶこともできる。

現在、TIDE96.0は24時間オンエアされており、参加しているラジオ放送チームは100を数える。北部ドイツの方言プラット・ドイチュの放送から、トルコ語、ロシア語、スペイン語放送もあり、国際色豊かだ。TIDE TVも、毎日16時から深夜まで、教育番組からコメディ、トークショーにいたる多彩な番組を放映している。TIDE TVは、VIVA、あるいはMTVで、放映チャンスが得られなかったドイツのミュージシャンらのビデオを放送していることでも知られている。

TIDE
写真左)ロマオ氏(右)とグートケさん
写真右)住宅街にある個人宅のような放送局

TIDE96.0で毎週木曜、17時から18時まで、ポルトガル語、ドイツ語の2カ国語放送Radio Mamaterra(ハジオ・ママテハ)をオンエアしているのは、ブラジル人ジャーナリスト、マルコス・ロマオさんとドイツ人のパートナーであるオルトルン・グートケさんの2人。彼らは、キロンボ・ブラジル(Quilombo Brasil)というドイツ語・ポルトガル語圏文化コミュニケーションセンターを運営しており、ラジオ放送は彼らの活動の一端だ。

ブラジル系のラジオ放送はこの他にもあるが、2人は、ブラジル音楽、ダンス、映画など文化系のテーマだけに留まらず、社会問題、時事問題をタイムリーに取り上げ、各界からさまざまな職業のゲストを迎えてインタビューするなど、幅広い放送活動を行っている。多民族国家ブラジルらしく、人種差別問題に鋭敏に反応するほか、高齢化する在独ブラジル人の福祉、健康などをテーマにしたディスカッションなども展開しており、ハンブルクのブラジル人コミュニティーにとって欠かすことのできない存在となっている。

写真提供:Radio Mamaterra

www.tidenet.de
www.mamaterra.de

 
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