ジャパンダイジェスト

ドイツの街角から

岩本順子 翻訳者、ライター。ハンブルク在住。ドイツとブラジルを往復しながら、主に両国の食生活、ワイン造り、生活習慣などを取材中。著書に「おいしいワインが出来た!」(講談社文庫)、「ドイツワイン、偉大なる造り手たちの肖像」(新宿書房)他。
www.junkoiwamoto.com

ウオーターフロント生活圏

FLOATING HOUSE

特にこれといったことのない日曜日のドイツ、人々はまるで申し合わせたように水辺に集まってくる。ハンブルクなら、人工湖であるアルスター湖とエルベ川のほとりが、散策する人々でいっぱいになる。その賑わいようは、まるで土曜日のショッピング街のようだ。ひょっとすると、彼らは、週に一度、魂を洗い清めにやってくるのかもしれない。水のある風景は、心に安らぎを与えて くれるからだ。

とりわけ、エルベ川沿い一帯は、目下ハンブルクで最も注目すべき地域となっている。老朽化した建造物が改修され、新築のオフィスビルやアパートが立ち並び、カフェ、レストランが次々にオープンし、数年前までは人通りのなかった日曜日の倉庫街に人々があふれるようになってきている。今から15年ほど前、市議会で煉瓦造りのアンティークな倉庫街を改築し、洒落たロフトスタイルの住宅街やレストラン街にしてはどうか、というアイデアが出た時、市民がこぞって反対したのが嘘のよう。 目下、ハンブルク市はエルベ川沿いの港湾地域をハーフェンシティと名付け、開発に躍起になっている。

フローティングホーム
フローティングホーム

今年の夏、エルベ川のスポーツボート船着場で、洒落たモデルハウスが公開された。「マラン」と名付けられたこの住宅は、ハンブルクの建築事務所フェルスター&トラビッチ(Foerster&Trabitsch)の作品。例えばアムステルダムでは、運河に浮かべたハウスボート上で実際に水上生活をしている人々がいるが、ハンブルクでも、そんな暮らしができるようになれば、との夢を込めて設計されたものだ。「マラン」の場合は、ハウスボートではなく、鉄とセメントでできた180トンの「ポントン」と呼ばれる浮き橋の上に組み立てられた、れっきとした2階建ての家。運河、湖、港湾地区の船着場など、どこにでも設置することができる。

「マラン」のプレゼンテーションと前後して、ハンブルク市は、ハウスボートや浮かぶ家の設営を、初めて一般市民に許可することにした。最初に許可が下りたのは、ハマーブロック区のビレ運河に繋がる貯水池で18軒分のスペースがある。近い将来には、他地区でも認可し、合計75軒分のスペースを確保することになっている。やがてハンブルクの港湾地区を縦横する運河は、カラフルな家々で彩られるようになることだろう。

ところでハンブルクには、すでに50年以上前から、水辺に浮かぶ家があった。現在、ハンブルクの倉庫街を背にするツォル運河に停泊している「浮かぶ教会」 (Flussschifferkirche / 河川用船舶教会)だ。1906年に建造されたこの船は、もともとヴェーゼル川で使用されていた水上コンテナ船だったのだが、その後しばらく、病院船として活躍したのち、1952年にプロテスタント教会に改築された。このような浮かぶ教会はドイツでもただ一つしかないという。毎日曜日の午後には礼拝が行われており、誰でも参加することができる。この浮かぶ教会で誕生したカップルも沢山いるそうだ。

マランと船の教会
マランと船の教会

 
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