ジャパンダイジェスト

伝統を飲む!

ミュンヘンを訪れた観光客が必ずと言ってよいほど立ち寄るビアホール、「ホフブロイハウス」。観光地化しすぎていてつまらないと言う人もいますが、歴史に裏打ちされた骨太な威厳を保っています。今回は、ホフブロイハウスの歴史と伝統についてご紹介しましょう。

ホフブロイハウスの創業は1589年、バイエルン王ヴィルヘルム5世により、宮廷醸造所として誕生しました。そして1610年以降、市民にも販売されるようになりました。1920年には、アドルフ・ヒトラーがホフブロイハウスのフェストザール(祝典の間)で大集会を行い、ナチスの旗揚げとなったことは有名です。大人数を収容できるビアホールは、政治の場としても利用されてきました。バイエルンでは、歴史を刻む出来事の現場として度々ビアホールが登場します。

ホフブロイハウスの常連さんのジョッキ
ホフブロイハウスの常連さんのジョッキ。
左のものは60年前から使われている

現在では、店内に観光地、そしてバイエルンの伝統文化の中心地の両面を同時に見ることができます。中央の小さな舞台の周りでは、ブラスバンドの演奏に混じって様々な国の観光客の言葉が聞かれます。みんな上機嫌で店内はとても賑やか。団体客は上の階を使うことが多く、バイエルンの民族音楽やダンスが披露されています。一方、入り口近くの席では、くつろいだ様子の常連客たちが強いバイエルン訛りでおしゃべりをしています。伝統の中心にいるのはこの常連たちです。

常連になるには顔の効く常連客からの推薦が必要になります。審査や順番待ちがあるため、申し込んでから2~3年はかかるとか。常連客の一番の特権は、自分の家のようにビールが飲めるということです。顔写真入りの会員カードを提示すれば、店の外にどんな長い行列ができていても、優先的に中に入ることができます。天井から看板が下がっている席は「Stammtisch」と呼ばれ、常連客の専用席です。普通のお客さんも座って良いのですが、常連客が来たら席を譲るのがルールです。ジョッキは自分専用のものを使えます。入り口近くにある鍵の掛かった棚から自分のジョッキを取り出して店の人に渡します。陶器製のジョッキにはホフブロイハウスのマークが入っていて、金属の蓋が付いています。私の知り合いは、60年前の祖父の代から受け継がれたジョッキを大切に使っていました。ミュンヘンっ子にとって、ここにジョッキを置けるというのは大変な誇りなのです。

400年以上も前から存在するホフブロイハウス。今私が座っているこの席に様々な人が座り、ジョッキを打ち鳴らしてビールを楽しみ、そして去っていきました。私が去った後もたくさんの人がここでビールを飲んで語り、歴史は作られていきます。そう考えると、何だかワクワクしませんか? 伝統あるビアホールでビールを飲むということは、自分も歴史の一部になり、伝統を飲むということなのです。

HOFBRÄUHAUS MÜNCHEN
Platzl 9, 80331 München
www.hofbraeuhaus.de

 
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