6歳の娘が地元の公立小学校に入学したとき、私はドイツの現地校について何も知らず、我が子がこれからどんな学校生活を送るのか想像もつきませんでした。そのため、私はかえって「何でも来い!」と開き直っていました。しかし、ドイツ人にとっての常識が日本から来た私にはそうでないことが多く、未知との遭遇を楽しみにしていた“太っ腹”な私でさえも、最初の頃は毎日が驚きの連続でした。そんな体験の一部から、現地校の生活がうかがえる情報をピックアップして、何回かにわたってお届けします。
まず、ドイツの伝統的な小学校は半日制で給食がありません。帰宅時間が早いので、その分午後は自宅で勉強する習慣があります。ドイツの小学校といえば“宿題”。ドイツの小学生は毎日たっぷりと宿題を持ち帰るので、「友達と遊ぶのは宿題が終わってから!」が親の口癖です。しかもこの宿題、実はとても厄介なのです!
イラスト: © Maki Shimizu
ちゃんと宿題をしなければ、授業についていけなくなることもしばしば。学校でまだ習っていない課題が出ることもあるのです。子どもは「宿題の答えが全然分からない」と泣きついてくるので、低学年ほど親が子どもの勉強を手伝う頻度が高くなります。学校側は「親が子どもの宿題をみるのは当然」といった態度で、宿題を忘れると成績にも影響してくるほどです。
ドイツの学校がなぜ宿題を重視しているかというと、自ら学ぶ姿勢を大切に考えているからです。ドイツには日本のような塾がないので、宿題によって学ぶモチベーションを作るのですが、宿題が学校の学習内容を先取りし、その部分を先生が解説せずに次の学習テーマに進んでしまうこともあるので、親としてはビックリ仰天です。宿題は単なる宿題ではなく、授業の代行をしているかのようです。分からないことがあれば自ら調べ、考え、探求する。そんな姿勢を幼い頃から身につけることが、その後の子どもの進路さえも左右するというわけなのです。
ところで親が勉強を教えるとなれば、必然的に親の学力レベルも問われますし、外国籍の親であればドイツ語能力も求められます。私の場合、娘の宿題をチェックすることが日課だったおかげで、つたない語学力のレベルアップにつながったのも確かですが、宿題の比重があまりに大きいときには、不満に思うこともありました。
最近の傾向としては、学校が全日制になったり、昼食付き学童保育のある小学校も増えたり、また親に代わって宿題の手伝いをするサービスなども登場しているので、ドイツの学校も時代と共に変わりつつあるのを感じています。
さて、ドイツの学校の日常生活ですが、ドイツの子どもたちは朝が早い。冬には、まだ星が輝く真っ暗な道を出掛けていきます。授業は8時過ぎに開始。途中でお腹が空くので、“朝食”と呼ばれる軽食を持っていき、休憩時間に食べます。気になる朝食の中身ですが、丸パンやサンドイッチと並んで、輪切りキュウリ、リンゴ、バナナ、ニンジンなど丸ごとの野菜や果物が目立ちます。水筒も必ず持参させます。
それから、ドイツには日本のような授業参観日がありません。これは親の立場からすると残念なことです。現地校の授業風景をどうしても見たかった私は、娘が忘れ物をしたときに「絶好のチャンス!」と校舎に入りこみ、教室を垣間見に行ったことがあります。そんな“盗み見”をしなくとも、「見学したい」と申し出ればいつでもOK なのですけどね!
イラスト: © Maki Shimizu
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