ジャパンダイジェスト

ビールの原料 ー ホップの話

ビールになくてはならない植物と言えば、ホップですよね。ホップには、ビールに爽やかな苦みと香りを与えるだけでなく、雑菌の繁殖を防ぐ、泡持ちを良くするなどの効果もあります。ハーブとしても食欲増進や抗菌、催眠、利尿作用に優れているため、古代から薬用植物として重宝されていました。

ホップは、麦芽から抽出した麦汁を煮沸する行程でビールに投入されます。麦芽と比べて使用量は少なめですが、使用するホップの種類や量、煮沸釜に投入するタイミングによってビールの苦みと香りを大きく変えることができるため、醸造家のこだわりがうかがえる原料なのです。初期の段階で投入すれば苦みを与え、終了間際または直後に入れれば香りを付けられます。ホップには、産地や種類によって刈り草の香りや柑橘系の香りなど様々なバリエーションがあるので、醸造家は仕上がりをイメージして数種類のホップをいくつかの段階に分けて投入します。

ホップの毬花
雌株の枝にたくさん着生する緑色の毬花。
「花」と書きますが、「毬花」は花ではありません

ホップはアサ科に属する多年生のつる性植物で、雌雄異株のため雌株と雄株があります。北緯35~55度のやや寒冷な地帯で栽培され、南ドイツのハラタウ地方やチェコのザーツ地方、米国のワシントン州などがその産地として有名です。日本でも、北海道や長野県で栽培されています。

地中に残っている株で冬を越したホップは、初夏に棚に巻きつきながら茎を伸ばし、7月頃、枝の先に「毛花(けばな)」と呼ばれる刷毛(はけ)のような花を咲かせ、収穫の盛夏には7メートル程の高さに成長して葉を繁らせます。ビールに使われるホップは、毛花が開花時期を過ぎて松かさのような形に変化した「毬花(まりばな)」と呼ばれる部分です。毬花の中に詰まっている黄金色の顆粒「ルプリン」が苦味質や香りの精油成分の元で、苞(ほう)に含まれるポリフェノールと相まって美味しいビールを造り出します。

ビールに使われる毬花ができるのは雌株だけ。では、雄株はどうするかって? 実は雄株は野生で自生しているものまで、くまなく引き抜かれてしまうのです。なぜなら、開花の時期に雄株から飛散した花粉を受粉した雌株の毬花はルプリンの量が減少しているばかりか、香り自体に精彩を欠くためです。醸造家が求めるのは処女のホップだけ。そんなホップの花言葉は「不公平」です。邪魔者扱いされる男たちのため息が聞こえてきそうですね。

余談ですが、ホップ農家の男性に禿げている人は少ないそうです。最近の研究で、ホップには女性ホルモンに似た物質が含まれることが分かっています。男性の薄毛には男性ホルモンが影響していますが、ホップが男性ホルモンの過剰な働きを抑えてくれるということなのでしょう。ドイツの薬局ではホップの成分が入ったシャンプーも売られています。これを機に、「ビールをたくさん飲んで男を磨こう」なんて言い出す男性もいるのでは?

 
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