ジャパンダイジェスト

Nr. 15 放課後の子どもたち

「ドイツでは子どもが友達と遊ぶのに電話でアポイントを取るので驚いた」という読者からのメールがありました。そうなんです。日本では、放課後に校庭や公園に行くとクラスメートや顔見知りの友達がいて、なんとなく集まって遊んでいます。この、なんとなく皆が同じ空間の中で一緒にいる一体感。これがドイツではなぜか、なかなか得られにくい体験なのです。

「うちの子があなたの子どもと遊びたがっているの。今日の午後3 時から6 時まで、時間はあるかしら?」私の娘が幼稚園児だったとき、ドイツ人のお母さんからほぼ毎日のように電話がかかってきました。そして、それほど遠く離れていないのに車や自転車で子どもを送り、6 時になると迎えに来ました。田舎に住んでいたからかもしれませんが、親の送り迎えはかなり徹底されていて、特に冬になるとすぐに周囲が暗くなるので、外出には親が必ず付き添っています。日本では夜9 時以降でも小学生が1 人で自転車に乗って、習い事や塾から帰宅する姿を見かけますが、夜道の暗いドイツでは全く考えられないことです。

車でお迎え
イラスト: © Maki Shimizu

ドイツでのポピュラーな遊びは、公園でのブランコ、砂場、かくれんぼ。カードゲームやレゴ、積み木なども人気で、最近は携帯型ゲーム機を持つ子も増えてきました。一見すると、日本とあまり変わらない遊び風景。しかし、よく見てみるとドイツ人の子どもたちは3 人で遊ぶのが苦手なよう。3 人だと、どうしても1 人が仲間に入れない現象が起こるのです。これは私の経験上、大人の場合でもそうなのです。会話をしているママさんたちのすぐ近くに立っていると、私の存在を気にかけてくれて、その内なんとなく仲間に入れる雰囲気になるのが日本なのですが、ドイツでは双方の会話が終わるのを待たなければなりません。これはドイツでは大切なマナーなのです。生徒と先生が話しているところに、ほかの生徒が「先生~!」と呼び掛けるとひどく怒られるか、または完全に無視されるかのどちらかです。2 人が話している間に3 人目が割り込んでくることはマナー違反として、たとえ幼稚園児であっても先生から厳しく叱られます。そうしたしつけのために、ドイツの子どもにとって3 人で遊ぶことは難しいのかもしれませんね。

余談ですが、普段友達の家にお邪魔するときにお菓子などの手土産を持って行く習慣が、ドイツにはあまりありません。以前、娘がとてもお世話になったドイツ人家庭に、比較的値の張るものをお礼として差し出したことがありました。そのとき、相手から感謝の言葉と同時に、少し顔をゆがめられた経験があります。ドイツではモノやお金よりも、人間関係が深まるようなお礼(お茶に招待したり、手作りのケーキや庭に咲いた花を贈るなど)の方が喜ばれるようです。

ところで、ドイツの習い事事情はどうでしょうか? 男の子であれば圧倒的にサッカーが人気。3歳になると地元のサッカーチームから勧誘されることも。スポーツは女の子にも人気があって、「エアロビクス」「トランポリン」「水泳教室」などのプログラムが充実。中でも乗馬はドイツらしい習い事の1 つで、「Voltigieren」という馬に乗りながら曲芸をする「曲馬教室」は、すぐには入会できないほどの人気ぶりでした。ドイツの子どもは午後の早い時間に学校から戻るので、宿題を済ませると、好きなことに時間を費やし、友情を温め合います。さらに子どもの送迎に便乗した親同士の交流も活発です。

習い事
イラスト: © Maki Shimizu

 
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