ジャパンダイジェスト

秋風と共に、ビール前線到来! - カーンシュタッター・フォルクスフェスト

秋風と共に、ドイツにビール祭りの季節が訪れます。中でも世界中のビールファンが憧れる祭りと言えば、ミュンヘンのオクトーバーフェスト。とは言え、ドイツにお住まいでも、なかなかこの祭りに参加できないという方が多いのでは? しかし、諦めることなかれ。地元に根差したビールのお祭りが国内各地で開催されているので、近郊の街のビール祭りを探してみてください。日本列島に春を知らせる桜前線のように、ビール祭りはドイツ各地に黄金色の季節を告げにやって来ます。

今回は、シュトゥットガルト郊外のネッカー河畔で行われる「カーンシュタッターフォルクスフェスト(Cannstatter Volksfest)」をご紹介しましょう。

観覧車
世界最大の移動式観覧車。
酔い覚ましにネッカー河畔をそぞろ歩けば、心地良い秋風が頬を撫でる

オクトーバーフェストから1週間遅れの10月の第2日曜日を最終日とする17日間、同ビール祭りに次ぐ400万人規模の来場者で賑わいます。地元の人からは「ヴァーゼン(Wasen=芝)」と親しみを込めて呼ばれるこの祭りの会場。オクトーバーフェストが「ヴィーゼン(Wiesen=野原)」と呼ばれているのに対し、芝とはお上品ではありませんか。

シュトゥットガルト市長によってビール樽に注ぎ口が撃ち込まれるのを合図に、ビール祭りが始まります。シュヴァーベン地方の民族衣装を着た人々によるパレードやジェットコースター、射的にお化け屋敷。そして忘れてはならないのが、黄金色に輝く大地の恵み、ビールです! ビールは、高濃度の上等な麦汁から造られるフェストビールが振舞われます。もちろんジョッキは1リットルサイズ。会場には、この地方を代表する4つのビール会社がそれぞれ4000~5000人を収容できる9つの巨大テントを建て、音楽とビールで人々を楽しませてくれます。ジョッキを片手に長椅子の上で足を踏み鳴らして歌うのは、ビール祭りならではのお楽しみ。しかし、観光客が多いミュンヘンのように度を越してバカ騒ぎをする人はあまりいません。

ミュンヘンの祭りは1810年に行われたバイエルン王国の皇太子ルートヴィヒ1世の結婚祝いが発祥ですが、 秋風と共に、ビール前線到来!シュトゥットガルトのものは1818年に飢饉の終焉を祝ったことが始まりです。1815年、インドネシアのタンボラ火山の噴火によって塵が空を覆い、欧州は異常気象に見舞われました。後に「農民の王」と呼ばれる若きヴュルテンベルク国王ヴィルヘルム1世は、王妃の兄であるロシア皇帝ニコライ1世の協力を得て大飢饉を乗り越えます。飢饉後最初の収穫物を積んだ車が運ばれてきたとき、その感謝祭がヴィルヘルム1世の誕生日である9月27日に行われました。そして翌年からは、収穫を祝う農民の祭りとして毎年開かれるようになり、規模を拡大させながら、民族のビール祭りへと変わっていきました。会場の中央にそびえる果物を装飾した24メートルの柱は、国の危機を救ったロシア皇帝の友情に感謝を示すために建てられたもので、形を変え、今日も秋の実りを祝うシンボルとなっています。

www.cannstatter-volksfest.de
 
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