ジャパンダイジェスト

シェールガス採掘はドイツビールに悪影響?

天然ガスの一種、シェールガスのドイツでの採掘が、この国を象徴するビール造りに悪影響を及ぼすとして、ビール醸造業者連盟がアルトマイヤー環境相らに開発規制を求めたニュースは、
「さすがビールの国ドイツ!」という驚きの声と共に世界中を駆け抜けました。

安価なガス供給への道を開くものとして注目されているシェールガス。その資源量は膨大で、世界のエネルギー事情を激変させる可能性を秘めています。回収可能なドイツのシェールガス埋蔵量は世界で20番目。脱原発に向けてエネルギー政策の転換を迫られているドイツ政府にとって
は、喉から手が出るほど欲しい資源です。

一方、日本では、地層が新しいため、シェールガスの商業的生産は期待できないと言われています。しかし、安価なシェールガスを輸入できるとなれば、原発の稼働停止でエネルギー供給に不安を抱える日本にとってはありがたい資源です。

メルツェン
水と緑を大切にするドイツは、シェールガス開発にどのような結論を出すのか

ただ、シェールガスの採掘方法には、まだ多くの課題が残されています。主流となっている水圧破砕法では、地下2000〜4000mのガスが含まれる岩層に大量の水を高圧で注入することで亀裂を作り、天然ガスを回収しますが、亀裂がふさがらないように水に混ぜて注入される化学薬品の中には有害物質も含まれており、これが地下水を汚染するのではないかと言われているので
す。また、ガスを回収する際のメタンガスによる大気汚染や、高圧水が断層に当たることによる地震発生のリスクも懸念されています。シェールガス開発を積極的に押し進めてきた米国でも、オノ・ヨーコさんと息子のショーン・レノンさんを急先鋒に反対の声が上がっています。

ドイツでは、開発地区が人口密集地区であることから、連邦環境省が安全を確保できるよう規則を整えるなどして、採掘に向けた準備を進めていましたそのような最中の5月21日、ビール醸造業者連盟のハーン会長が、アルトマイヤー環境相やレスラー経済技術相ら6閣僚に書簡を送付したのです。それは「水が汚染されると、ビールの原料を水とホップと麦芽に限定したビール純粋令に反する製法で造らざるを得なくなる。上質な水の確保はビール醸造の生命線で、現時点でのシェールガス開発は見合わせるべきだ」といった内容のものでした。国内1300カ所以上の醸造所の大半は、天然の地下水を使用しています。醸造所の多くは小規模経営で、水の加工施設を有していないため、安全な地下水はビール文化の肝なのです。

 9月に連邦議会選挙を控えた政府は、市場規模が約80億ユーロと、国を代表する産業であるビール業界の意向を無視できないでしょう。シェールガス開発が国のアイデンティティーの1つである「ビール純粋令」に反することになるという視点から国民の注目を集めたことで、採掘が及ぼす環境汚染への関心も高まりました。ビール業界からの異議を受け、政府はシェールガス開発の舵取りをどう行っていくのか、今後の行方に注目が集まります。

 
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