海外で生活しているご家庭では、たいていご主人の仕事の都合で突如として帰国を余儀なくされることが珍しくないと思います。自営業の方や国際結婚をされている方などの場合は、半永住の心づもりで暮らすご家族もいるでしょう。「あと○年」と、帰国の時期が予め分かっている場合と分からない場合とでは、子どもの教育に対する“戦略”は変わってきます。日本に帰国して知ったことですが、中学・高校受験の“帰国子女”入試枠に合わせて帰国日を逆算する賢いお母様方もたくさんいらっしゃるそうです。そんなことを思いもしなかった私は、「そういう帰り方もあるのか」と感心したものです。そのことについては別の機会にお話ししたいと思いますが、私たちの場合は計画性がなく、ただアタフタして、日本の公立中学校に足を踏み入れることになったわけです。
実際に日本の学校生活が始まると、逆カルチャーショック!? とでも言いましょうか、いろいろと新鮮な気持ちで日本を再発見することになりました。まず1つ目にショックだったこと。それは、1教科を2人の先生が担当していたということです。2人で1クラスを受け持つため、ときにはレベル別に指導ができたり、1人の先生が休んだ場合はもう1人が教壇に立ったりと臨機応変です。さらに驚いた2つ目のことは、全科目のカリキュラムが配られたときでした。すべてを読み切れないほど細かい文字でビッシリ書かれた一覧表。作成するのは大変だっただろうなと先生の苦労を勝手に察しながらも、今後、我が子が学ぶことになる内容を把握できて、親としては安心しました。そして何よりも、計画に沿って授業が進むことがすごい! ドイツでは教科書を始めから順番に学習することがあまりなく、それは学年が上がるほどそうでしたので、具体的に細かく記した学習内容などは見たこともなかったのです。日本の学校はどこも統制されていて、システマチック。軍隊を思わせるようなその雰囲気にやや違和感を覚えながらも、第一印象は正直なところ、「ドイツよりも学習のクオリティーが高そう」でした。
イラスト: © Maki Shimizu
私の娘といえば、日本の学校に保健室があることに驚き、そこにベッドがあることにまた驚き、“読書の時間”という本を読む時間があり、校歌があり、下駄箱があり、掃除の時間があり、家庭科では料理を作り・・・・・・、とドイツにないものすべてに感激している様子でした。また、ちょっとしたハプニングもありました。指定された体操着や水着を買っていなかったので、我が子は水泳の授業にビキニ姿で参加。ドイツの学校では女子はビキニが当然。でも、体育の先生は大笑いでした。この先生によると「日本の中学生の女子はちょうど恥ずかしい年頃なので、何か理由をつけては水泳を休む」ということでした。なるほど、ドイツと日本の女の子では、自分の体に対する意識が違うのでしょう。ドイツ人女性の肌の露出度の高さを見れば分かると思いますが、ドイツ人は驚くほどふくよかな女の子でも、平気で肌を見せて歩きますね。お腹周りがズボンからボヨ~ンとはみ出していても気にする様子もなく、まるでそれを自慢するかのようにヘソピアスまで見せている人もいます。ドイツの若者は女子も男子も自分に自信のある子が多いですが、それはイコール自分の体にも自信があるということなのかもしれません。娘はドイツの幼稚園時代から、「やせ過ぎ!」と周囲から言われて育ってきました。でも、お友達になった日本の女の子たちが同じく「Papier(紙)のように薄い」ことにすぐ気が付いて、私と同じ! と安堵感を覚えているようでした。
イラスト: © Maki Shimizu
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