ジャパンダイジェスト

第5回 社有車の私用規定

従業員が顧客訪問などの外勤に柔軟に対応できるように、企業が社有車を貸与し、これをプライベートでも使用させるというケースは少なくありません。この方法は、ドイツの企業で一般的に行われており、被用者も雇用者も多くのメリットを享受できます。今回はこの「社有車の私用」についてまとめてみます。

1. 基本的事項

企業が車を購入した場合、基本的にこの車両は営業資産となります。したがって、この車に関連して発生するコストは、会計処理上は営業経費とみなされます。また、車が新車か中古車か、あるいはリース車であるかに関係なく、全面的に前段階税額控除の対象となることがあります。

雇用者が許可した上で、被用者が社有車を私用に使う場合には現物給与となり、賃金税と付加価値税の課税義務が発生します。

2. 社有車の私用

① 運転記録簿方式

1回の走行距離について、それが営業用か私用か、または通勤用かを確定するためには、規定通りに運転記録簿に記入することが条件となります。ドイツの税法には、運転記録簿について厳格な規定があります。走行記録は、走行後すぐにノート状の記録簿に記入しなければなりません。1回ごとの走行については、それが終了した時点での累計走行距離を含めて漏れなく、また時系列で連続して記録する必要があります。

このほか、少なくとも以下の情報を書き添えなければなりません。

  • 日付
  • 営業または通勤のために発生した各走行の開始と終了時点の累計走行距離
  • 目的地
  • 社有車使用の目的
  • 訪問先

社有車の全走行距離のうち、何パーセントを私用に使ったかを確定し、社有車全体のコストから私用分をこのパーセントで割り出したものが現物給与とみなされ、課税対象となります。

② 1%方式

運転記録簿方式による記入には時間が掛かり、間違いも起こりやすいため、「1%方式」を適用することも可能です。これを適用できる唯一の条件は、社有車を50%以上、通勤に使っていることです。この一括方式の課税基準は、税込みの新車販売価格です。実際の購入額やリース価格は考慮されません。この方式では、社有車の純粋な私用について、税込み新車販売価格の1%が現物給与として、毎月賃金税の課税対象となります。

この1%に加え、自宅からオフィスまでの走行について、実距離(片道)1km当たりの車の税込み定価の0.03%を掛けた額、または実距離1kmに実際の通勤日数を掛け、さらに車の税込み定価の0.002%を掛けた額が現物給与として課税対象となります。

【例】

ある被用者が、定価3万ユーロの社有車を私用にも使っています。自宅からオフィスまでの実距離は15kmで、15日間通勤したと想定します。

3. 例外規定

社有車の私用については、多くの例外規定が存在します。一例として、雇用者が被用者の通勤に関する課税分を負担し、被用者が税制上の不利益を被らないように配慮するケースがあります。

また、運転記録簿方式と1%方式に代わる第3の方式として、社有車1台について実際に発生したコストを現物給与の課税ベースにすることも可能です。計算上、この方式が被用者にとって最も有利であると判断された場合には、この方法が採用されることが少なくありません。このほか、1人の被用者が複数の社有車を使う場合や、逆に1台の社有車を複数の被用者が使う場合、また社有車をごくまれにしか私用に使わない場合などについて、特別規定が設けられています。

4. まとめ

社有車を被用者に貸与し、それをプライベートでも使用することについては、 雇用者と被用者双方のメリットとコストを比較検討するために、税務コンサルティングの必要性が定期的に発生します。社有車については、税制も頻繁に変更されます。実際に先頃、電気自動車の社有車私用に関する規定が新たに導入されました。社有者の使用に関しても、貴社のケースに合わせてご相談に応じますので、お気軽にご連絡ください。

(著:税理士 ファブリス・ベーナー)

RinkeRINKE TREUHAND GmbH
リンケ・トロイハント会計税理事務所

ジャパンデスク
担当:田中
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