ドイツも日本と同様に、インターネットでの通信販売(以下、ネット通販)が飛躍的に伸び、売り上げは10年前に比べ3倍に跳ね上がった。クリスマスプレゼントを購入するのにドイツのネット通販を利用したいが、言葉に不安を感じ、躊躇している人も多いかもしれない。今回は、ドイツ人のインターネットの利用状況と、ドイツで人気の通販サイトをご紹介しよう。
ドイツ人のインターネット利用状況
ドイツのインターネット普及率は、先進国の中で特に進んでいるとは言えない。2013年の時点で、1650万人(人口の4人に1人)がEメールを利用せず、インターネット検索もしない完全なオフライン状態にあるという。インターネット普及率の高い都市は、ハンブルク、ベルリン、ブレーメン。逆に低い地方はザクセン=アンハルト州で、住民の2人に1人はブロードバンド接続を利用していない。
日本のネット通販状況
2013年の日本のネット通販市場は11.2兆円で、前年比17.4%も伸びている。全商取引における電子商取引(ネット通販)の割合は3.7%で、前年比0.6ポイント上昇した。ネット通販が進んでいる米国では5~6%台で、日本の水準はまだ低く、まだまだ伸びしろがあると言えそうだ。
13年のネット通販売上高ランキングでは、1位アマゾン、2位ベルメゾン(千趣会)、3位ニッセンと続く。1位アマゾンの売上高は7000億円で、2位以下を1桁引き離して抜きんでている。
日本のネット通販企業の最大手は楽天で、2012年の売上高は2858億円。楽天は通販モールに出店した小売店から得る手数料や出店料、広告が売り上げの中心であり、アマゾンなどとはビジネスモデルが若干異なる。
ドイツのネット通販状況
2012年のドイツのネット通販市場は295億ユーロで、全商取引におけるネット通販の割合(約5.5%)は米国と同水準だ。ドイツはネット通販が普及する前から通信販売の盛んな国で、ネット通販普及の土壌があったと言えよう。
2013年のネット通販売上高は以下の通り。1位はアマゾン(amazon.de)で、売上高は48億ユーロ。1000位までの通販サイトの売り上げのうち、16.3%を占める。2位のオットー(otto.de)は17億ユーロ、3位はツァランド(zalando.de)である。
ドイツでよく利用される通販サイトは、アマゾンとオークションサイトのイーベイ(ebay)で、その他はジャンルごとに、電化製品ではアルタネイト(alternate.de)、ファッションではツァランド、雑貨類ではチボ(tchibo.de)などと使い分けられている。
ファッション系通販と言えばツァランド
ツァランドは今年10月、フランクフルト証券取引所に上場を果たした。2008年、サンダルに特化したECサイト(ネット通販)としてスタートしたが、現在はファッションや小物なども販売し、事業を拡大している。
私もこの通販で商品を注文したことがあるが、アイテムを近距離で撮影し、細部や素材感まで詳細に掲載しているので、ネット上の写真のみでも商品を把握しやすい。また、購入から100日以内であれば基本的に返品が可能で、必要書類も商品に添付されている。返送料は原則無料。この返品のしやすさは、ドイツ語を母国語としない人たちにとっては魅力的だ。
実際に注文してみる
実際に通販サイトを利用するとき、言葉の壁が低いのはアマゾンだろう。日本のアマゾンと比べてもらえば分かるが、サイト構成がほぼ同じになっているため、言葉が分からないときには日本のサイトを見ながらインターネットショッピングが楽しめる。また、ドイツ人によく利用されている前述のサイトであれば、通販トラブルに巻き込まれるようなことはほぼないだろう。
ドイツの法律で定められている返品期間は、商品が到着してから14日以内である。その他の条件等は通販サイトによって異なるので、注記をよく読んでから注文すると良いだろう。
ドイツ人とグーグルの相性
インターネットに関する最新の技術やサービスは、米国からやって来ることが多い。次々と上陸してくる新サービスをどんどん取り入れる日本人に対して、一歩引いて様子をうかがっているのがドイツ人である。
2013年3月、連邦議会と連邦参議院は「グーグル法(Lex Google)」と呼ばれる著作権法改正案を可決した。グーグルで検索すると、ニュースの見出しや本文の冒頭部分を検索結果で閲覧できるが、事前に報道機関に許可を取って掲載しているわけではないため、報道機関の間では、自社サイトの顧客を奪われるという強い抵抗があった。そのため、サイト運営会社が報道機関側に使用許諾や使用料を支払うよう義務付けたのである。
それに対しグーグルは、2014年10月にグーグルニュースなどでドイツの主要数紙からの記事掲載を打ち切った。ドイツの業界団体は、グーグルの狙いは各紙にコンテンツの無料利用への同意を強いる行動であるとして、同社のこの動きを脅しと理解している。
ドイツはほかにも、競争法(独占禁止法)に関するグーグルと欧州連合(EU)当局との和解案を白紙化させた。その背景には、米国国家安全保障局(NSA)の個人情報の諜報や収集問題が影を落とす。グーグルなどの米企業が、NSAに協力して顧客データへのアクセスを許可していたとNSA元職員のスノーデン氏は暴露したが、企業側は否定している。
さらに、グーグルが提供し、無料で使えるGmail。ドイツでは以前、gmail.comではなくgooglemail.comというドメインが使われていた。ベンチャーキャピタリストのドイツ人が持つ商標権により、グーグルはgmailというドメインの使用を禁止されていたのだ。2012年に商標訴訟は終了し、gmailの商標権はグーグルに移管された。
こうしてみると、ドイツとグーグルの相性の悪さを感じるが、オンライン業界の巨人に対し、盲目にその利便性を享受するのではなく、一歩距離を置いて客観的に考察するというドイツ人の姿勢の表れであろう。
インターネットユーザー
Internetnutzer
<参考文献とURL>
■ welt.de "Noch immer ist jeder vierte Deutsche offline" (22.04.13)
■ wiwo.de "Die größten Onlineshops in Deutschland"(09.10.2013)
■ bmwi.de "Handel"
■ spiegel.de "Leistungsschutzrecht: Bundestag beschließt Google-Gesetz"(01.03.2014)
■ meti.go.jp "経済産業省 "電子商取引に関する市場調査の結果"
■ bci.co.jp "ネット通販売上高調査"(14.06.13)
■ webdbm.jp "webマーケティング研究会"主要国のWebビジネス事情"
■ toyokeizai.net "アリババに続く? ドイツEC最大手が上場"(18.10.2014)
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