歯周病について 1
歯科医院に行ったときに限らず、テレビや雑誌の広告で、「歯周病」という言葉を目にする機会があるかと思います。名称としては一般に知れわたっている歯周病ですが、虫歯と並ぶ歯科2大疾患の一つだということはご存じでしょうか。実は、「人類史上最も感染者の多い感染症」としてギネスブックに載っているほど、歯周病は身近な病気です。しかし、実際にどのような病気であるか、きちんと理解している人は少ないというのが実情です。そこで、今回から2回にわたり、歯周病とはどんな病気なのかという基本情報から、その予防や治療法までをお伝えしたいと思います。
歯周病は、別名「歯槽膿漏」とも呼ばれ、症状が進行するとその名の通り、腫れた歯茎から膿が出てくることがあります。これは、歯周病菌が歯茎や骨に感染を起こした際に、免疫細胞が身体を守るために細菌と闘い、崩壊したものやその残がいです。日本では、45〜54歳の中年層の88%の人に歯周病の兆候が見られ、歳を追うごとに症状が悪化する傾向にあります。
40代後半男性の、進行した歯周病
口の中には700種類以上の細菌が存在しますが、歯周病の原因となる菌はそれほど多くなく、おおよそ10~20種類といわれています。これらは嫌気性菌と分類される細菌で、「空気を嫌がり、空気に触れない部位で増殖する」性質を持っています。そのため、歯周病は歯肉から歯槽骨へと奥深く侵入し、細菌が作り出す毒素によって、症状を悪化させるのです。
歯周病は口腔内だけの病気と考えられていましたが、近年では様々な全身疾患との関連が証明されています。例えば、心臓病患者の疾患部位からは歯周病菌が多く発見されており、これは歯肉の血管を通った歯周病菌が心臓に移動して、炎症を引き起こしているためと考えられます。
また、妊婦の羊水にも歯周病菌が侵入することが分かっており、米ノースカロライナ大学の研究では、歯周病のない口腔内が健康な妊婦の早産率が6%であるのに対し、歯周病に罹患し、妊娠中に悪化した妊婦では、早産率が43%にまで上昇したとのことです。
そのほかにも、歯周病が糖尿病の危険要因であることが知られており、歯周病治療を行うことによって、血糖値が低下するとの報告もあります。近年では、がん疾患と歯周病にも直接的、間接的に関連している研究結果も出ており、今まで考えられていた以上に、歯周病によって健康被害が始まっていたり、症状を悪化させていることが分かってきました。身体の健康を維持するためにも、歯周病治療の重要性に注目が集まっています。
さて、以下は自分でできる簡単な歯周病のセルフチェックリストです。ご自身で「歯周病危険度」をチェックしてみてください。次回は、「歯周病の予防と治療」についてお伝えします。
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