第12回 売上税の還付手続き
ビジネスの国際化に伴い、企業は国外への顧客訪問や見本市出展などに際して、現地で売上税(Umsatzsteuer ・付加価値税)を支払う機会が増えています。ドイツでは、国内企業(日本企業のドイツ法人を含む)が国外で支払った売上税は、四半期ごとの前段階税額控除の対象外として扱われます。
しかし、国外で支払った売上税の還付を認めている国は少なくありません。そこで今回は、ドイツ国内に拠点を持つ企業が、主に欧州連合(EU)に加盟する他国で支払った売上税の還付を申請する際の手続きについてまとめました。
1. 総則
ドイツ企業は、EU他国において現地企業から売上税を加算した請求書を受け取った際、売上税の金額について還付を受けることができます(仕入税額控除)。その申請は、ドイツ国内の連邦中央税務庁(Bundeszentralamt für Steuern、BZSt)を通して、オンラインでのみ行われます。
BZStは申請内容を審査し、申請日から15日以内に、還付が行われる当該EU国の担当官庁にこれを転送します。
2. 申請事項と申請期限
異なる複数のEU加盟国で還付申請が行われる場合、国ごとに申請が必要になります。申請時には記載必要事項に留意します。以下は必須事項です。
• 還付元となる国の名称
• 申請企業の社名、所在地、納税者番号(Steuernummer) または売上税登録番号(Umsatzsteuer-ID-Nr.)
• 申請企業の事業内容
このほか、当該国ごと、請求書ごとに以下の記述が必要とされます。
• 請求書の発行者である商品・サービス供給者の名称、所在地、売上税登録番号
• 請求書の発行日と番号
• 課税標準額(Bemessungsgrundlage、請求書の正味価額)
• 売上税額
• 控除可能な税額
• 購入した商品またはサービスの内容
還付申請の期限は、請求書発行日の翌年9月30日までです。この日までに、BZStに申請書が到着していなければなりません。申請が認められる最低還付額は50ユーロです。また、3カ月間(例えば1四半期)の還付額が400ユーロに達した時点で、年度末を待たずに即刻、1件の申請にまとめて提出することが可能です。
3. 還付の条件
売上税の還付は、売上税法によるところの「企業」しか申請することができません。特に、申請企業が現在有効な納税者番号、または売上税登録番号を取得しており、前段階税額控除を受ける資格を有することが前提になります。
もう一つの条件は、申請企業が還付申請を行った当該国に拠点を持たず、現地で課税対象となる売上を上げていない、または売上税納税を目的とする登録をしていないことです。
原則的には、申請は請求書の原本がなくても受理されます。しかし、国によっては請求書にある額面の課税標準額が最低1000ユーロ、ガソリン代では最低250ユーロの場合に、申請書に請求書のコピーを添付することを求められます。これもオンライン上で添付、送信しますが、技術的な理由から、添付データは5MB以下に抑える必要があります。
基本的に、還付を認められるのは、当該国の国内企業も還付を認められる種類の仕入税額だけです。例えば、交通費や接待費に関連する前段階税額控除については、還付制限を設けている国もあります。
4. EU圏外での申請
EU圏外での売上税還付は、ドイツと当該国の間で還付についての二国間協定が締結されていれば可能です。この協定に従い、ドイツ企業は一定条件の下に、当該国で支払った売上税の還付を受けることができます。申請期限は請求書発行日の翌年6月30日までで、当該国の担当官庁に直接提出することになります。ただし、申請者の立場からすると、各国の申請フォームがそれぞれ独自の形式で、時には現地の言語のみで発行されていることがあり、EU圏内での申請より手続きが繁雑でしょう。
まとめ
グローバルに展開する企業の場合、国外で還付が可能な仕入税額は、1年の間にかなりの金額に達するはずです。弊社では、ご要望に応じて請求書の内容を精査し、申請を代行いたします。また、ドイツ以外に拠点を持つ企業を対象に、ドイツ国内での売上税還付についてもサポートいたします。お気軽にご相談ください。
(筆者:税理士クリスティーネ・フュッセル)
リンケ・トロイハント会計税理事務所
ジャパンデスク
担当:田中
www.rinke-japan.de
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