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歯科治療に用いられる器具 2

歯科治療に用いられる器具 2

大きな虫歯や奥歯を治療する場合、一般的には金属やセラミックといった材料が使われます。しかし前歯や小さな虫歯の治療に際しては、短い時間で白い詰め物をしてもらった経験がある人は多いのではないでしょうか。この白い素材は一般では「プラスチックの詰め物」と呼ばれていますが、正確には「コンポジットレジン」という名称です。

先月は虫歯を削る機械、エアタービンについてお伝えしました。この技術によって場所を選ばず自由に歯を削ることができるようになったものの、その穴に詰める材料の選択肢が少ないことが大きな問題になりました。

昔から使われている詰め物の素材は金属かセメントですが、特に審美性を要求される前歯や小さな虫歯には使用が難しかったため、審美・強度的に条件を満たす材料の開発が急務となりました。

そして1960年代半ばにシリカ粒子と樹脂を化学的に結合させることに成功し、歯科用コンポジットレジンが誕生しました。金属に比べると、比較的安価で容易に使用できるため、広く普及しました。とは言え、当時はまだ物理的な強度が十分ではなく、粒子も粗い上に固まるまで5分以上かかりました。また、歯質とは化学的な接着性がなかったため、歯とコンポジットレジンの隙間から汚れや細菌が侵入し、詰め物の奥に虫歯ができる「二次虫歯」が多く発生するという欠点も。

そこで1970年代に開発されたのが接着性コンポジットレジン。歯の表面に化学処理を施すことにより、コンポジットレジンと歯を強固に接着させることに成功しました。これは家の外壁を塗装する際、職人がペンキの乗りを良くするために、リン酸で壁面を処理したことにヒントを得て開発されたものです。

この接着性コンポジットレジンのおかげで二次虫歯や歯冠漏洩(ろうえい)(コロナルリーケージ)などは減少したものの、治療時に2種類のペーストを練り合わせて固める方式(化学重合型)だったため、その作業過程で泡を巻き込んだり、また経時的な材料の劣化が早いという問題が残っていました。

そこでさらに改良されたのが、現在最も多く使用されている「光重合型」のコンポジットレジンです。これはペーストを混ぜ合わせる必要がない上に、照射機の光(470nm前後の可視光線)を当てることにより硬化するため、作業時間に制約がなくなって治療成績が飛躍的に上がりました。

コンポジットレジン

また、ナノテクノロジーの発展の恩恵を受け、現在使用されているコンポジットレジンはミクロンよりさらに細かい単位の粒子で構成されており、色・艶ともに歯と区別がつかないくらいの自然な詰め物ができるようになっています。強度も次第に向上してきているため、比較的深い虫歯の治療に適用されたり、矯正治療に使われるブラケット装置を歯に固定するのにも十分な接着力を持つまでになりました。

この20年で大きな躍進を続けているコンポジットレジンですが、それでも金属やセラミックに比べると材質の強度や安定性で劣ります。そのため、広範囲の虫歯に対する最終的な詰め物としては使用できず、また3~5年ほど経つと材質劣化が起こりはじめ、コーヒーやお茶などの着色が目立つようになることもあります。

鏡を見て「前歯が少し黄ばんできたな」と思ったら、それはコンポジットレジンの劣化かもしれません。その場合は、虫歯が広がらないようにするためにも歯科医院でチェックしてもらってください。

 

 
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