第15回 会社行事と現物給付
会社が主催する夏の屋外イベントやクリスマスパーティーなどは、社内の雰囲気を良好に保ち、社員同士がリラックスした雰囲気の中で交流する良い機会です。雇用者が被用者に定期的にプレゼントを贈ったり、出張中の食事代を全額支給するなどの措置も、被用者から歓迎され、会社への帰属意識を高めるためのインセンティブとなるでしょう。今回はこうした会社行事や現物給付について、税制上の控除規定をご説明します。
1)会社行事
会社行事は企業内の目的で開催され、全従業員に提供されることが前提です。一部署単位での行事も例外的に認められますが、この場合も、部署に属する全社員を対象とすることが条件になります。
① 行事の規模
会社行事の費用控除で留意しなければならないのは、行事が適度な規模に収まっている、つまり極端に大規模なものにならないということです。税法上の観点での判断基準は、開催頻度と行事の内容です。頻度については、1年に2回までであれば、まず問題なく控除対象となります。このため夏の屋外でのイベント(バーベキューパーティーなど)とクリスマスパーティーが、最も一般的な会社行事として定着しています。
行事の内容について、税法上は「この種の行事で普通とされるもの」と定義され、実際には食事と飲み物の提供になります。ちょっとしたプレゼントや福引きの景品などもこれに含まれます。ただし、行事全体として規模が大きくなり過ぎないように留意しなければなりません。会場代や出し物(アーティストによる演奏や演芸など)についても、コストが極端に高くならないように配慮します。
② 110ユーロ控除
行事費用に対する課税については、被用者1人当たりの行事コストがグロス金額で110ユーロ以下の部分は非課税となります。雇用者が従業員のために催す行事は、税法上は従業員に対する現物給付となるため、費用に対して賃金税が発生します。この賃金税が、110ユーロの免税点(Freigrenze、費用の上限)までは控除されるわけです。従来は免税点を1ユーロでも超えると費用の全額に対して課税されていましたが、2015年1月1日からこの点が改正され、110ユーロの免税点を超えた金額に対してのみ課税されることになり、雇用者のメリットが増大しました。
控除額の算出については、まず会社行事の全コストを合計し、これに売上税(Umsatzsteuer)を加算します。この総額を参加者の数で割りますが、もし参加者に同伴者(配偶者など)がいた場合には、2人で従業員1人分の控除額が適用される点に留意しなければなりません。つまり、この場合には1人当たり55ユーロの控除となります。
2)贈り物
雇用者から被用者に対する贈り物も、原則的には現物給付として賃金税の課税対象となります。ここでは、それが非課税となる2つの例外をご紹介しましょう。
①特別な機会の贈り物
誕生日や勤続記念日などの特別な機会に贈られるプレゼントは、グロス金額60ユーロまでの物品なら、賃金税、社会保険料ともに賦課されません。この免税点は、2015年1月1日に従来の40ユーロから20ユーロ引き上げられました。
この際、雇用者側が留意しなければならないのは、 このうち正味金額(ネット)で35ユーロまでしか経費として控除されない点です。つまり、これより高額なプレゼントをする場合、その金額は雇用者の課税標準に加算されるため、非課税の恩恵を受けるのは被用者だけということになります。
② その他の現物給付
ドイツでは税制簡素化のため、上記の贈り物以外に被用者1人当たり毎月44ユーロの免税点を非課税・社会保険料賦課なしの現物給付枠としています。被用者に支給される毎月の給油券などがその例でしょう。そのほかにも現金支給でない限り、さまざまな形態の現物給付が控除対象となっています。
3)食事手当
食事代は、原則的には個人の経費となりますが、食事が業務に関連して発生する場合も少なくありません。
①会議を伴う食事
特別なミーティングや会議など、通常業務の枠に収まらない場面で食事をする際には、食事が業務の目的上で必要になったものとみなされます。この場合には上記の1人当たり60ユーロの免税点が適用され、食事代がそれ以下であった場合には非課税となります。
② 出張中の食費
原則的には、社外での業務に対しては法定の食事手当が支給されますが、雇用者の判断で、被用者が出張中に立て替えた食事代を全額支給することも広く行われています。この際の条件は、被用者が法定の定額食事手当を受け取らず、食事代が60ユーロの免税点を超えないことです。
まとめ
以上のように、企業は被用者に対して給与以外の様なインセンティブを非課税で提供することができます。しかし、その際には会社行事や現物給付の内容を十分確認し、税法上どのような条件が適用されるかに留意しなければなりません。ご不明点があれば、どうぞ弊社にご相談下さい。
(筆者:税理士ファブリス・ベーナー)
リンケ・トロイハント会計税理事務所
ジャパンデスク
担当:田中
www.rinke-japan.de
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