ジャパンダイジェスト

第20回 企業にとっての贈り物と税制

ちょっとしたプレゼントは人間関係を円滑にするものですが、これは仕事の上でも同じです。多くの企業は、従業員や取引先に贈り物をしたり、何らかの形で特別に労をねぎらったりします。こうした「贈り物」は、税法の観点から見るとやや複雑なテーマ。今回は、贈り物の税制上の扱いについての留意点をまとめました。

1)はじめに

贈り物とは、受取人に対してその対価を求めない、金銭以外の心遣いです。税法上では「現物給付・贈与」(Sachzuwendungen)とも称されます。

従業員への現物給付や、取引先へのプレゼントなどがこれに当たりますが、こうした場合に問われるのは、発生した出費が必要経費として控除されるかどうかという点です。贈り物を受け取った人の立場では、贈り物は納税義務を伴う所得とみなされ、その人に適用されている税率に基づいて課税されることがあります。ただ、この納税負担は、贈る側が「定額課税」を採用することで回避できます。

2)定額課(Pauschalversteuerung)

企業からの贈り物については、それが従業員に対するものか取引先に贈るものかを問わず、贈る側の企業により税率30%の定額課税措置を取ることが可能です。連帯税、場合によっては教会税が別途課税されることもあります。

定額課税は、贈り物が受取人にとって納税義務を伴う所得となることが予想される場合に適用できます。従って、受取人がドイツ以外の国に住み、ドイツで課税対象とならないケースなどは、定額課税の対象にもならないわけです。

企業における定額課税は、贈り物の受取人がその企業の従業員である場合には、事業経費として控除することができます。

受取人が取引先である場合、定額課税が査定の際に考慮されるかどうかは、贈り物を贈る企業が、この物品を全面的に必要経費として控除できるかどうかによります。これについては4)で後述します。

プレゼント贈呈の際には、受取人に対して、納税手続きが済んでいる旨を伝えることをお勧めします。

企業が贈り物に定額課税を採用したら、その後、贈り物をする際には常に定額課税を適用しなければなりません。このとき、贈る相手が従業員である場合と取引先である場合で、別々のルールを採用する(片方のグループだけに定額課税を適用する)ことも可能ですが、重要なのはルールの採用後、これを徹底して継続することです。

3)従業員への贈り物

自社の従業員にプレゼントや現物給付をする際には、一定の条件下で非課税となります。

月額44ユーロ以下の物品の現物給付については、賃金税の課税対象になりません。例えば給油券などのバウチャーがこれに当たります。現物給付は定額課税規定の対象外として、従業員の給与に追加する形で贈ることができるわけです。

また、従業員の個人的な行事(誕生日、結婚式など)に際してプレゼントを贈る場合は、価額60ユーロまでは非課税となります。これ以外に追加で贈り物をする場合(従業員全員へのクリスマスプレゼントなど)には、会社が定額課税という形で処理することが可能です。

従業員に対する贈り物は、会計帳簿上では経費として利益を低減させ、節税に寄与する項目とみなされます。

4)取引先への贈り物

贈り物の費用を必要経費として控除するためには、受取人1人につき年間35ユーロの上限額を超えないこと、そして贈り物が事業上の理由によるものであることが条件となります。また、受取人の氏名などを別途記録する必要もあります。

贈り物の受取人に課税義務が発生するリスクを事前に回避したい場合には、贈る人がその出費を必要経費として控除できるかどうかに関係なく、最初から定額課税を適用すると良いでしょう。

例えば特別な個人行事に際しての贈り物は、価額60ユーロまでは非課税となり、定額課税の対象外となります。

ボールペンやカレンダーなど、企業が不特定多数の相手に贈るもので、その価額が10ユーロ以下の物品の贈呈である場合もまた、定額課税規定から外されます。

5)まとめ

税制における「贈り物」は、企業に対する税務調査の中で精査される科目の一つです。従って、これまでに課税していなかった贈り物があれば、改めてその扱いに配慮し、帳簿にきちんと記録を残しておくことをお勧めします。「贈り物」への課税は広範かつ複雑で、今回はそのうちの一例をご紹介しましたが、個々の事例についてはその都度、精査する必要があります。例えば企業によるサッカースタジアムのVIPラウンジ使用や、食事を伴う接待などが対象になるでしょう。また、会計処理上の記録方法も含め、ご不明点があれば弊社までどうぞお気軽にご相談下さい。

(筆者:税理士クリスティーネ・フュッセル)

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リンケ・トロイハント会計税理事務所

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