第26回 専門教育費の控除
職業訓練か大学進学かにかかわらず、職業に就くために学ぶプロセスには費用が発生します。これらの費用の一部が確定申告の際に控除されることは、納税者にとってささやかな恩恵です。これは特に、最初の職業訓練を終えた後、または大学をいったん卒業した後に、新たに第2の職業訓練または大学での履修継続を行う際に認められ、確定申告の際に全額が必要経費として控除対象となります。今回は、どのような条件と範囲で控除が認められるかをご紹介します。
1)最初の職業訓練と大学進学
税務署の定義による「最初の専門教育(Erstaus-bildung)」とは、将来就く職業に必要とされる最初の職業訓練(Ausbildung)、または大学進学(Erststudium)です。期間は12カ月以上にわたっていることが条件で、課程修了時に資格試験を受ける必要があります。
最初の職業訓練または大学進学の費用は「生活費」に属し、個人の確定申告で「特別支出(Sonder-ausgaben)」とみなされます。控除の上限額は年間6000ユーロです。ただ費用が発生した年に無収入だった、あるいは収入が非常に少なかった場合には、これを「特別支出」として考慮することはできません。またこの場合には、費用を翌年に繰り越したり、前年に繰り戻したりすることも不可能です。「最初の専門教育」には、以下のものがあります。
●ドイツでの伝統的な職業訓練
●大学の学士(バチェラー)課程
●最初の国家試験
2)第2の職業訓練と大学での履修継続
最初の専門教育を終えた後で継続する第2の職業訓練、または大学での履修継続では事情が異なります。これらの費用は「特別支出」ではなく、「必要経費(Werbungskosten)」として控除することができるのです。重要なのは職業訓練や学科履修が後年になって職業に生かされ、その人が納税者となった際に、収入と上記の学費との間に、具体的かつ客観的に確定できる関連性が十分にあることです。
大学での履修継続は、その前に職業訓練を終えている、または最初の学位を得ていることが前提です。特に以下のケースが、第2の職業訓練または履修継続と認められます。
●最初の職業訓練の後、または学位取得後のすべての教育措置
●職業訓練を終えてから大学の学士課程(バチェラー)に進む場合
●大学の修士課程(マスター)
●職業訓練と学科履修を並行して行う「デュアルシステム」
●被用者として働きながら大学に通う場合
上記の出費は全額が控除対象となり、「特別支出」で見られたような上限はありません。
控除対象となる出費の例は、以下の通りです。
●講習費、授業料、大学に納める学費
●パソコンやソフトウエアなど、学びに必要な教材
●専門書
●自宅と教育を受ける場所の間の通学費
●講習や作業グループに通うための交通費
●これに伴って追加で発生した食費
●自宅以外での宿泊が発生した場合の宿泊費
●セミナーや研修旅行の費用
●学費ローンの利息
●場合によっては勉強部屋とそれに必要な家具
●教育を受ける場所に第2の住居を構える必要があれば、その費用
重要なのは、これらの費用を納税者が自分で負担していることです。確定申告を行う際、税務署の要請に応じて、銀行の口座残高や請求書などを提示し、この事実を証明する必要があります。
第2の専門教育を受けた期間内に課税対象となる収入が発生しなかった場合にも、確定申告をすることには意味があります。費用が「必要経費」として考慮され、この年の学費を繰越欠損金として扱い、翌年収入が発生したら課税収入額から控除できるからです。これにより、その後数年間にわたり減税効果が期待できます。
3)雇用者による教育費の還付
ある従業員に対する教育措置が自社のメリットになると雇用者が判断し、従業員に代わって費用を負担した場合には、その費用は厳密には被用者の給与の一部ではありますが、賃金税は非課税となります。ただ、当然のことながら、教育費を雇用者が払い戻したら、従業員が確定申告の際にこれを必要経費として控除することはできません。
4)まとめ
ドイツの連邦財務裁判所は、最初の専門教育費を「特別支出」と扱って「必要経費」の控除対象から除外していることを違憲と考えています。同裁判所が指摘しているのは、最初と第2の教育費の扱いに違いを設けている点です。連邦憲法裁判所では、この点をめぐり多数の訴訟が進行中で、今年中には最終判断が下りる見込みです。現状では個々の事例に沿って第1の専門教育費を必要経費として申告しておき、連邦財務裁判所の決定を待つのが得策でしょう。
弊社では「専門教育費の控除」というテーマを含め、確定申告全般について喜んでご相談を承ります。 (筆者:税理士クリスティーネ・フュッセル)
リンケ・トロイハント会計税理事務所
ジャパンデスク
担当:田中
www.rinke-japan.de
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