ジャパンダイジェスト

よくある耳の症状・ 病気

最近人混みの中で立ち話をしても良く聞こえないことがあり気になっています。また、ドイツでは耳掃除をするために医者に行くと聞きましたが、本当でしょうか?

Point

  • 日本人はカサカサした乾性耳垢が多い
  • ベトベトした湿性耳垢は耳鼻科で掃除
  • 子どもの風邪では中耳炎にも注意
  • ヘッドホンによる聴力低下が増えている
  • メニエール病はストレスと睡眠不足が関与
  • 高齢者に多い高音域の聴力低下と耳鳴り

耳垢(Ohrenschmalz)

● どうしてたまるの?

耳垢(じこう)は、①耳道の耳垢腺からの分泌物、②古くなった表皮、③外からのホコリ、が混じってできます。耳垢は食事や会話で顎を動かすことで、自然に外に出ていくようになっています。しかし耳垢がたくさんたまって耳道が詰まってしまうと、耳栓をしたような状態となります。

● 乾いた耳垢、湿った耳垢?

耳垢腺からの分泌物の量の差によるもので、どちらかが正常というわけではありません。日本人の7割近くはこの腺が少ないのでカサカサした「乾性耳垢」、西欧人の約9割はベタベタと湿った「湿性耳垢」の持ち主です。

乾いた耳垢、湿った耳垢

乾性耳垢 湿性耳垢
症状 乾いてカサカサ 湿ってベタベタ
人種による割合 日本人の約7割 欧米人の約9割
耳垢腺から分泌 少ない 多い
顎運動で排泄 あり あり
耳かきでの除去 比較的容易 難しい
耳鼻科での除去 少ない 多い

● 日本とドイツの耳掃除

乾燥耳垢の多い日本人は1カ月1〜2回、耳かき(Ohrlöffel)で耳掃除をします。湿性耳垢では耳かきでの除去が難しく、綿棒で拭き取るか、数カ月に1度、耳鼻科にて耳掃除をしてもらいます。

耳閉感(耳閉塞感、Gefühl wie Watte im Ohr)

● 耳の詰まった感じ

耳のこもったような、耳の詰まった感じになります。自分の声が響いたり(自声強聴)、外の音がグアングアンと不快に響いたりします。

● さまざまな原因で起こる耳閉感

耳垢、外耳炎、異物などによる外耳の異常、風邪をひいた後の中耳炎など中耳の病気、急性低音障害型感音難聴(後述)のような内耳の病気でもみられます。

聞こえが悪い(Gehörlosigkeit、Schwerhörigkeit)

● 難聴の原因

急に聞こえなくなる「急性難聴」として多いのは中耳炎、突発性難聴、メニエール病、徐々に聞こえなくなる「慢性難聴」として多いのは老人性難聴です。音がきちんと内耳まで伝わらない難聴を「伝音難聴」(中耳炎など)、音の振動がうまく電気信号に変換されて神経に伝わらない難聴を「感音難聴」(加齢性難聴など)といいます。

難聴の原因

● 高齢者での特徴

左右両方の耳で高音域の音を聞き取りにくくなり、人混みの中での聞き返しが多くなったり、テレビのボリュームを大きくしたり、知らず知らずに大きな声で話す人もいます。一方、低音域の聴力は保たれるため、低音が強く感じられ重低音などが不快に響きます。

● ヘッドホン(イヤホン)難聴

大きな音に長時間さらされることによって生じる聴力障害です(騒音性難聴または音響外傷、geräuschbedingten Hörverlust)。以前は工場の作業現場など職業性のものがほとんどでしたが、最近は長時間ヘッドホンで音楽を聞いたり、大音響のコンサートが原因となる「騒音性難聴」も増えてきています。

耳鳴り(Tinnitus、Klingel der Ohren)

● 案外多い耳鳴りの頻度

耳鳴りは実際には音がしていないのに、何かが鳴っているように聞こえる現象です(日本耳鼻咽喉科学会)。耳鳴りは日本の人口の10〜15%の人にみられ、このうち臨床的に問題となるのは2〜3%といわれています。

● 自分だけに聞こえる

耳鳴りのほとんどは自分だけにしか聞こえない「自覚的耳鳴り」です。これに対して、ごく小さい音を外から聴取できる「他覚的耳鳴り」は、筋肉の痙攣による雑音や耳部の圧迫などによる血流音が原因となっています。

● 高齢者に多い耳鳴り

「キーン」「シャー」というような高周波音が持続的に聞こえます。何かに没頭していると気にならないものの、トイレなど1人静かな環境で強く聞こえます。ドイツでは治療薬として、銀杏の葉の植物製剤(Ginkgoblätter-Extrakt)が用いられることがあります。

突発性難聴(Hörsturz)

● 症状は?

前触れなく突然発症する難聴で、多くは片耳だけにみられます。耳鳴り、めまい、吐き気を伴うことも。働き盛りの40~60歳代に多いといわれています。難聴となるのは1度だけで、改善・増悪の波はみられません。

● 原因は不明です

音を感じ取って脳に伝える部分の循環障害やウィルス感染が原因と考えられていますが、詳細は不明です。

● 治療法と予後

発症して1〜2週間以内(急性期)に治療しても完治するのは40%、ある程度の難聴が残るのが50%、改善しないのが10%といわれています。治療開始が遅れるほど治療効果が下がります。

中耳炎(Mittelohrentzündung)

● 子どもに多い

中耳は鼓膜の奥の空洞(鼓こしつ室)を中心とした部分。6カ月〜8歳ぐらいの子どもは構造的に咽頭(のど)と中耳をつなぐ耳管(Eustachi-Röhre)が太く短いた

め、風邪のときなどに細菌が中耳に至りやすくなっています。

● 風邪での耳の痛み

風邪のときに子どもが夜中に急に耳を痛がって泣きだす経験をした人もいるかもしれません。中耳に膿や浸しんしゅつえき出液がたまって、圧が上昇し痛みが生じま

す。「耳だれ」といって、鼓膜に穴が開いて膿が流れ出ることも。

● 中耳炎の治療は?

通常は点鼻薬や内服薬で良くなります。改善しない場合には、鼓膜に小さな穴を開けて圧を下げ滲出液を吸い取る「鼓膜切開術」が行われることがあります。

メニエール病(Menière-Krankheit)

● めまい、吐き気、難聴、耳鳴り

天井や周囲がグルグルと回る、体のバランスが変でフワフワする、めまいの発作前に耳鳴りが強くなる、低音域の聴力低下などの症状が繰り返し起こります。30~ 50

歳代の人に多い病気です。

● ストレスが引き金?

心身のストレス、過労、睡眠不足が引き金になると考えられています。ストレスで内耳の内リンパ液の量を調整できずにリンパが腫れ、神経が圧迫されるためです。

● 治療法には?

過労や睡眠不足を防ぐなどの生活指導を含めた、ストレスマネージメントが重要です。発作が起きたら慌てずに安静を保つようにします。

耳管狭窄症・耳管開放症

● 耳管の役割

耳管(前述)は鼓膜の内側と外側との間に気圧の差ができた時、開閉して鼓膜内外の圧を同じに保っています。

● どのような症状?

風邪に伴う鼻の奥の炎症で耳管の鼻側の開口部が塞がってしまったり(耳管狭窄、Tubenstenose)、体重減少や脱水が原因で逆に開きっぱなしになってしまう(耳管開放症、Klaffende Tube)と、「耳閉感」や「自声強調」などの症状を来します。

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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