学校から「子どもの頭シラミのチェック」をするよう指示がありました。衛生先進国のドイツでも、今だに頭シラミの問題はあるのでしょうか?
Point• 学校や幼稚園のクラス単位で流行ります。
• 子どもに頭シラミが見付かったら、必ず学校・幼稚園に連絡を。
• 学校や幼稚園から通知があったら、必ず子どもの頭をチェック。
• 専用シャンプーと専用のクシで駆除。
• きちんとした駆除には約2週間を要します。
• 子どもに頭シラミが見付かったら、必ず学校・幼稚園に連絡を。
• 学校や幼稚園から通知があったら、必ず子どもの頭をチェック。
• 専用シャンプーと専用のクシで駆除。
• きちんとした駆除には約2週間を要します。
頭シラミ問題は昔の話ではない?
頭シラミ(Kopfläuse)は、頭髪に寄生し、皮ふから血を吸って繁殖する寄生生物です。日本でも衛生状態の悪かった戦争直後に問題となり、DDTという強力な殺虫剤で一時はほとんど見られなくなりました。しかし、環境汚染物質のDDTが規制されて以来、学校や幼稚園など子どもの集団生活の場を中心に、現在でも散発的な発生がみられています。ドイツでは、子ども1万人当たり年間600〜1000人と、風邪に匹敵するほど多くみられる感染症で、男児より女児にやや多いとされています。ドイツ国内に限れば、貧困層にも裕福層の子どもにも同じように発生がみられます。
頭シラミは古い時代から
頭シラミは約500万〜600万年前に体のシラミから分かれたと推定されています。シラミの痕跡は1万年ほど前の布地からも見付かっており、頭シラミ用と思われるクシもエジプトのミイラの墓から発見されています。中世のヨーロッパでは、頭シラミは日常生活の中でもみられるような、ありふれたものだったと考えられています。
学校から頭シラミの通知が来たら?
ドイツで生活をしていると、子どもが通う学校や幼稚園から「頭シラミ発生の通知」をもらうことがあります。1人の児童の頭から頭シラミが見付かると、すぐにクラス全員の家庭に通達されます。また、自分の子どもに頭シラミが見付かった場合は、直ちに学校へ連絡しなければなりません。
学校を休む必要はありますか?
ドイツでは、子どもに頭シラミが見付かった場合、ほかの子どもへの感染の危険がなくなったと判断されるまで学校や幼稚園をお休みすることになります。最初の駆除処置だけで安全だと判断したり、駆除処置が不十分だったりすると、再びクラス内での感染を招いてしまうことになりかねなせん。学校や幼稚園によって状況は異なりますが、通常、再登校や登園に医師の診断書を必要とするものではありません。もちろん、きちんとした処置がなされたことが前提となります。
頭シラミの症状
頭シラミ症は命に関わる病気ではありませんが、頭シラミが吸血する際に出す唾液成分とのアレルギー反応により頭部に痒みを生じます。痒みを伴った数ミリ大の盛り上がりが確認されることもあります。痒い箇所を指で引っ掻いて湿疹を起こしたり、掻き傷から細菌が入って皮ふ感染をきたすこともあります。
頭シラミの感染はどこから?
ほとんどは、学校や幼稚園で頭をくっつけ合って遊んだりすることによって感染します。また、帽子や自宅の寝具を介して拡がることもあります。毎日髪を洗って清潔を保っていても感染しますので、頭シラミが不潔の結果だというわけではありません。
頭シラミの見付け方
毛髪の中に潜んでいる頭シラミを見付けられれば良いのですが、成虫の動きは素早いので、一見しただけでは見逃してしまいます。一般に、白〜茶色の卵を見付ける方が容易です。フケとは違い、ふっくらとして光沢があるのが特徴で、後頭部や側頭部の髪の毛の根本から1cmほどの場所に付着しています。頭シラミ専用の櫛(Läusekamm)で念入りにすいて、白い紙を背景に確認すると確認しやすくなります。
頭シラミの増え方
成虫は2~3mm大で、主に後頭部や側頭部に白〜 茶色っぽい卵を産み付けます。卵は8日ほどで孵化し、2~3週間で成虫になります。1匹の成虫が1日5個ほどの卵を産み付けますので、例え1匹でも1カ月間に100個以上の産卵をすることになります。
頭シラミの駆除方法
大きく分けて2つの方法があります。1つは、洗髪後に泡立てたリンス液(Haarpflegespülung)を髪に塗り付けて専用の櫛で丹念に成虫や卵を取り除く方法です(ウェット法=nasses Auskämmen)。1時間近く掛かることもありますが、週2回ずつ2週間繰り返すことにより、頭シラミのライフサイクルを断ち切きることができます。
2つめは、頭シラミ駆除の化学薬品の入った専用の薬品、シャンプー(InfectoPedicul Malathion Shampoo ®、Goldgeist forte®など)やヘアスプレー(Jacutin N Spray®など)を用いる方法です。こちらは第1日目と第8〜10日目の2回の駆除処置が必要です。いずれの方法も、第17日目にウェット法にて再確認することが推奨されています。男児なら、頭髪を短くすると駆除作業が楽になります。
8〜10日後の再駆除が大切
薬用シャンプーやスプレーで成虫をすべて駆除できたとしても、髪の毛に残っている卵が孵化して成虫になれば、また同じことの繰り返しです。卵が孵化するのに8日間掛かることから、最初の駆除処置から8日以降に再び同じ駆除を繰り返すことが大切です(表1)。
表1. 頭シラミの駆除の2通りのスケジュール | ||||||
専用薬品での場合 | リンス液と櫛を用いる場合 | |||||
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1日目 | ● | ● | ||||
2日目 | - | - | ||||
3日目 | - | - | ||||
4日目 | - | - | ||||
5日目 | - | ● | ||||
6日目 | - | - | ||||
7日目 | - | - | ||||
8日目 | - | - | ||||
9日目 | ● | ● | ||||
10日目 | - | - | ||||
11日目 | - | - | ||||
12日目 | - | - | ||||
13日目 | - | ● |
頭シラミの卵の色について
薄い茶色の卵は、これから孵化して成虫になる可能性があります。白色の卵は、すでに孵化した後の抜け殻であることがほとんどです。きちんとした駆除を行った後に、白色の殻だけが見付かる場合は、もう心配ないとされています。
ほかに、どんな種類のシラミがありますか?
シラミには宿主特異性(寄生特異性)という特徴があり、ある種のシラミはふつう1種類の動物(宿主)に寄生します。そのため、例えばペットの犬のシラミ(Tierläuse)はヒトには伝染しませんし、ヒトの頭シラミが動物に感染することもありません。
また、ヒトに寄生するシラミで、陰部の強い痒みを生じるのが毛ジラミ(Filzläuse)ですが、毛ジラミはヒトの陰毛(Schamhaar)にだけ寄生する別種のシラミで、頭シラミが陰毛に寄生することも、その逆もありません。感染経路から「性行為感染症」の1つとされ、多くは性交渉により感染しますが、学生寮などでの集団入浴でも伝染ることがあります。
一方、ヒトの衣服や下着の中で生息してヒトの血を吸って生きているのがコロモジラミです。成虫はヒトの体ではなく、下着などに卵を生み付けます。こちらは入浴、下着の交換、衣類の洗濯にて駆除が可能です。