73 ドイツの制度を知らないと起こり得ること
最近では誰でもネットを通じて気軽に副業することができるようになりました。また、Buymaのようなプラットフォームを使えば、簡単に個人輸入代行の仕事を始めることも可能です。ワーキングホリデー制度の後押しもあり、パソコンとネットさえあれば仕事ができる職業の方も、ドイツに渡るケースが多く見受けられます。
このように最近ではドイツで仕事を始めることの敷居が非常に低くなっていますが、それゆえ、ドイツのさまざまな制度について知識がないままスタートして後々大変なことになってしまうケースが増えているのです。持っているビザによってもルールが違う場合があるため、保険会社の窓口の人がすべてを把握しているとは限りません。
そもそも、フリーランス・自営としての仕事をするのであれば、適正なビザを持ち、税務署等に申請する必要があります。次にそれぞれの状況に応じた適切な健康保険の選択が必要。しかし、ドイツの健康保険制度は非常に複雑で、どのように仕事をして、いくらの収入があるといくらの保険料になるかということが非常にわかりにくいのです。そのため、申請の仕方が違うだけで、高い保険料を課せられることもあります。
配偶者の保険に無料加入している場合は、得られる収入に限度額(2019年は月445ユーロ)が設定されています。限度額を年間で1ユーロでも超えれば、年初にさかのぼって1カ月あたり約180ユーロ、年間で2200ユーロほどの保険料を収めなければなりません。例えば、主婦(主夫)の方が副業なのに健康保険会社の質問票の職業欄に主婦(主夫)ではなく、職業名を書いてしまっただけで保険料が異なります。このように申請方法を間違うと、次に納税通知を示すまで変更ができなくなってしまいます。
以下よくある事例を見てみましょう。
・特定の会社でしか働けないビザで自営業をして問題に。
・英語がわかるからと、自分で弁護士と税理士に相談して有限会社を立ち上げたが、ビザ上は自営業が許可されていないので問題になった。
・税務署での登録申請で収入額は多いほうが良いと思い、かなり多めの見込み額で申請したところ、まったく払えない金額の所得税の前払金が発生した。
・さらに毎月の売上税申告が必要になったのにそれを怠り遅延金が発生するとともに、多めに申請した収入見込み額に基づいた金額を仮に払わなければならなくなった。
・税務署や保険会社からの請求が何かの間違いではないかと放っておいたら遅延金が貯まり、強制執行命令がきた。
・申請をしないで数年間フリーランスをした後、過去にさかのぼっての申告と納税を求められた。
・仕事を辞めた時に法定健康保険は解約されたと思い、その後も必要な手続きを取らなかったために、最高額の保険料を数カ月分課せられ、数千ユーロの請求を受けた。
・フリーランス登録をしたが、確定申告をしなかったために実際の収入よりも多い収入での仮の納税通知が届いた。1カ月以内の異議申し立ても行わず、修正ができなくなった。
・法定健康保険への無料の家族加入ができる収入限度額をわずかに超えたために、その年の1月にさかのぼり4000ユーロ以上の保険料が課せられた。
知らなかったとはいえ、法律や規則で決まっていることは覆すのが難しいのが現実。ましてや何度も手紙での催促が届いているにも関わらず、期日までに対応していなかったのであればなおさらです。内容がわからない書類は放っておかず、わかるまできちんと確認してください。