79雇用形態と社会保障
前回は、月収が450ユーロまでのミニジョブと1300ユーロまでのミディジョブについてご紹介しました。月1300ユーロを超える雇用では、社会保障費の割引はなくなります。社会保障費は給与額面の約20%、同額の雇用主負担を合わせると約40%にもなります。
社会保障費の「労使折半」というと、なんだか雇用主が負担してくれているような響きがありますが、雇用主は自発的に従業員の福利のために支出しているわけではなく、必要な経費なのです。その分も含めた額面の120%が給与であって、従業員は給与額面の40%(雇用主負担を含めた額の30%)の社会保障費を自分で負担しているとも言えます。これは毎月の給与明細からは分かりませんが、年間給与明細(Lohnsteuerbescheinigung)には記載されています。
社会保障費 | 従業員負担 | 雇用主負担 | 労使合計 |
---|---|---|---|
法定年金 | 9.300% | 9.300% | 18.600% |
健康保険 | 7.750% | 7.750% | 15.50% |
介護保険 | 1.525% | 1.525% | 3.050% |
失業保険 | 1.250% | 1.250% | 2.500% |
合計 | 19.725% | 19.725% | 39.650% |
※ 子どもがいない場合の介護負担はそれぞれ1.65%、合計3.3%
※ 健康保険料の15.5%は平均値、保険会社によりおよそ15.2%から16.1%までの幅があります
● 健康保険
健康保険は給与額面の最高約4500ユーロまで、年金保険は6700ユーロ(旧東独地域は6150ユーロ)までに対してのみ課せられます(2019年)。給与がそれ以上になっても社会保障の負担金額は増えません。
年収が6万750ユーロ(2019年)を超える場合は、プライベート保険への加入も可能です。法定健康保険の保険料は収入に対する一定割合で、扶養の配偶者や子どもは無料であるのに対して、プライベート保険では1人ずつ保険料を支払うことになります。収入が高いと現在の毎月保険料はプライベート保険のほうが安くなる場合もありますが、老後にはプライベート保険のほうが高くつくので、その分余計に年金貯蓄ができる余裕が必要です。
プライベート保険会社は、収入が限度額を超える人にはもちろんプライベート保険をすすめてきますが、一度プライベート保険に加入すると法定健康保険には戻れなくなってしまうため、よく検討する必要があります。ただし、駐在員が現地採用に切り替える場合は、法定健康保険への変更は可能です。
● ドイツと日本の年金
日本の年金加入期間が受給条件の10年に満たない場合でも、外国での滞在期間がカラ期間として合算されるので、納めた分に対しての受給は可能です。ドイツと日本の年金が合算されて一括で受給できるわけではなく、年金はそれぞれの国に申請します。
ドイツの法定年金は5年以上加入していると年次通知が届き、受給見込み額の確認ができます。5年未満の加入で本帰国の場合には、帰国2年後に支払った金額の還付ができますが、雇用主負担分を除く半額しか還付できないので、将来年金で全額受給するほうが得です。
本帰国の際は、ドイツ年金庁に対して特に手続きは必要なく、年金受給年齢になったら受給申請をします。名前・生年月日・生誕地でも照会できますが、給与明細に記載されている年金番号は念のため保管しておいてください。
■ ドイツ大使館サイト :ドイツの年金手続き
https://japan.diplo.de/ja-ja/service/rente/901058
※ドイツの年金庁へのメール問い合わせは日本語でも可能です。
■ ドイツ年金庁サイト(英語)
https://www.deutsche-rentenversicherung.de/DRV/EN/Home/home_node.html
※オンライン登録(ドイツ語のみ)をすればオンラインで自分の年金状況が確認できます。
※ eAT(滞在許可カード)とNFC機能付きスマートフォンが必要です。
https://www.deutsche-rentenversicherung.de/DRV/DE/Online-Dienste/Online-Dienste-mit-Registrierung/online-dienste-mit-registrierung.html
■ 日本年金機構 〜 海外居住者のページ
https://www.nenkin.go.jp/shiraberu/kaigai.html
※ねんきんネットに登録すればオンラインで自分の年金状況が確認できます。
https://www.nenkin.go.jp/n_net/index.html