99マイナス金利と銀行口座
● 預けて増える……は昔話
その昔、銀行にお金を預けると利子が付くものでした。1990年頃のドイツでは貯蓄口座に預けると、なんと8%もの利子が付きましたが、今や銀行預金利率は0.01%ほどになっています。
かといって、90年当時が今より800倍お得だったのかというと、そういうわけではありません。当時はインフレ率が今よりも高く、お金が8%増えても物価が6%上がったので、実質金利は2%だったことになります。それでもプラスになるため、お金の運用を考えなくても銀行に預けておくだけで、少しはお金が増えました。
ところが今は昔とは状況が違います。統計のとり方によっては2004年頃から、少なくともリーマン・ショック後の2010年以降は銀行預金利率よりもインフレ率の方が高いという状態になっており、それがすでに10年も続いています。インフレ率が0.5%しかないとしても預金利率が0.01%であれば、お金の実質的価値は年間0.49%減少していることになります。銀行にお金を預けると、その金額の額面は減らないとしてもその実質的価値は減り続けているということです。
そして、欧州中央銀行の政策金利は2014年以来マイナス金利となっているために、銀行は今までのようには利子を提供できないばかりか、各種手数料が引き上げられてしまいました。銀行によって異なりますが、例えば10万ユーロ以上の残高がある場合では利子が付くどころかマイナス金利となり、金利(保管料、Verwahrentgeld)を払わなければなりません。Postbankに至っては、普通口座では5万ユーロ以上、Tagegeldkontoでは2万5000ユーロ以上の口座残高に対して0.5%のマイナス金利が、今後導入される予定です。
● このままでは損? 資産運用を見直して
そもそも銀行が破綻した時に保証される預金保証の限度額は、一行一人当たり10万ユーロです。また、同じ銀行に口座を複数持っていたとしても保証限度額は同じく合計10万ユーロまで、二人の名義にしている共同口座であれば20万ユーロまでとなります。そのため、それを超える金額でる場合は口座を分散させた方がいいですし、現金で置いておいても価値は減っていってしまうので、運用方法を考えた方が良いということになります。
この状況は、銀行にとっては預金者に対して投資商品を売る絶好のチャンスになるため、口座にある程度の残高がある場合は銀行から電話がかかってきます。「このまま現金で置いておくと損をしてしまうため、投資をした方が良いですよ。ご相談に乗らせていただきますので、ぜひ支店においでください」という具合に。しかし銀行に相談に行く時は注意が必要です。
● 自分にとってメリットのある投資を
銀行が勧める商品は、あくまで銀行に利益をもたらすための商品であって、100%預金者のためを思っているわけではありません。例えば、消費者にとってメリットのある手数料の低いインデックスETFによる投資は、今やインターネットで誰もが簡単に調べることができますが、相談員から勧められることはほとんどないといえるでしょう。
「ETF投資に興味があるのですが」と切り出せば、ETFよりもこちらの方が良いなどと説得され、勧められるままに手数料の高い商品を購入してしまった……ということも。本当にその投資が自分にとってメリットがあるのかどうか、見極めが重要です。