6 ドイツの年金「3層モデル」
ドイツの年金は2005年の法改正以降、「3層モデル」と言われる体系を取っており、税制上、大きく分けて3つに分類されます。
1層目は法定年金(Gesetzliche Rentenversicherung)とリュールップ年金(Rüruprente, Basisrente)などです。2005年以降、年金収入が漸次課税されることになりましたが、代わりにこれらの年金保険料が漸次控除対象となりました。
2層目は、リースター年金(Riesterrente)と企業年金(Direktversicherung)。こちらは一定の限度額までは100%が控除対象となりますが、受給時は100%課税対象となります。リースター年金は30%まで、企業年金は全額の一括受給も可能です。
3層目はプライベート年金保険。毎月の保険料は控除対象となりませんが、年金受給時には課税対象となります。全額の一括受給が可能。2004年以前の契約では、一括受給の際の利息に対する課税はありませんが、2005年以降の契約では50%が課税対象となります。2005年からの課税を理由に、2004年には多くのプライベート年金保険が売られましたが、実際には2005年以降のリュールップ年金の方が保険料控除額が大きく、今からでも乗り換えた方がお得なケースも多々ありますので、一度確かめてみると良いでしょう。
ここで、それぞれの年金の特徴を見てみましょう。法定年金の受給額は、実質賃金の半分以下とも言われています。名義人が死亡した場合に配偶者が受け取る遺族年金は、受給額の55%。例えば、専業主婦が夫よりもずっと若い場合、女性の平均年齢の方が長いこともあり、老後の貧困リスクがより高まることになります。したがって、例え自分自身の収入がないとしても、自分名義の年金保険を掛けておくことが大切です。
リュールップ年金は法定年金と合わせて、独身者は年間約2万5000ユーロ、既婚者は2人で年間約5万ユーロまで所得税から控除できます。随時入金が可能なので、自営業者、または臨時収入がある場合、この年金制度を利用すれば、年度末調整で利益幅を調整し、合法的に節税することができます。例えば年収が3万ユーロの独身者の場合、1000ユーロ分を所得税から控除すると、約330ユーロも節税できます。リュールップ年金の途中解約・払戻しはできません。また、受給形態は「毎月の受け取り」に限られており、一括受給はできません。
リースター年金は、収入に応じて自己負担額を積み立てると補助金を受けられる制度で、特に低所得の母親にとって有利な制度です。例えば2008年以降に生まれた子どもが2人いて、年収1万8000ユーロ以下の場合、年間60ユーロの自己負担額で775ユーロの補助金が得られます。ただし、将来、欧州連合(EU)域外に移住することになれば、公式には補助金と税控除特典が取り消されてしまいます。
企業年金は雇用主を通して加入します。一定の保険料までは所得税と社会保障費が控除されるため、雇用主、被雇用者の双方にとって有利な制度です。
3層目のプライベート年金保険は税控除の対象にはなりませんが、それ以外の多様な特徴があります。年金保険に新規加入する場合の受給開始年齢は原則62歳ですが、プライベート年金保険では、受給開始以前でも一部引き出し可能なタイプのものがあります。
年金保険の選択は、まずはここで挙げた1、2層目の税控除対象となるものから始めると良いでしょう。