ジャパンダイジェスト
意識改革から始める資産運用

ドイツでお金と上手に付き合う方法

山片 重嘉山片 重嘉 (やまかたしげよし)
ファイナンシャルアドバイザー

1970年生まれ。98年に渡独、文化交流や持続可能農業のプロジェクトに携わる。また、食と健康のアドバイザーとして講演活動などに勤しむ。その後、ファイナンシャルアドバイザーとして独立。個人・法人へのアドバイスを行っている。人生のテーマは、健康とお金を切り口に、豊かな生き方について考えること。

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確定申告をしてみよう

14 確定申告をしてみよう

日本でもドイツでも、被雇用者であれば所得税は有無を言わさず源泉徴収されていますが、これは見方によってはかなり強引な制度で、勝手に召し上げられて、申告しなければそのままになってしまうというわけです。

予め税収入を確保できるこの制度は、国家にとっては都合が良いため、多くの先進国で取り入れられていますが、お隣の国フランスでは、そういうことを許さない国民性のためか、税金も社会保障費も源泉徴収制度はなく、収入のある人は皆、確定申告をしなければなりません。

確定申告で一体何が控除されるのか、いくら戻ってくるのか、申告はどのように行うのか、費用はどのくらいで、割に合うのか……といった疑問をお持ちの方は多いと思います。被雇用者や年金生活者の場合、税理士(Steuerberater)に依頼する必要はありません。各地の確定申告支援協会(Lohnsteuerhilfsverein)で、誰でも簡単に、年収に応じて比較的安い料金で確定申告ができますので、まずはここで自分の状況で料金を払って確定申告をする意味があるかどうか聞いてみると良いでしょう。

確定申告は4年遡って、今年中であれば2010年からの申告が可能です。被雇用者の場合、まず無条件で年間1000ユーロが控除されます。その他にも、限度額や制限はあるものの、通勤費や健康保険料、年金保険料、医療費・薬代、治療に通う交通費、処方されたメガネ・コンタクトレンズ代、訴訟・離婚・葬式に掛かった費用、引っ越し費用、幼稚園・ベビーシッターなど子どもの養育費、小学校の放課後学習・私立学校の授業料、親や離婚相手の扶養費・介護費、住居の改装や修繕に伴う人件費、確定申告費用などが控除の対象となります。

それらの各項目には、細かい規定があります。例えば引っ越し費用に関しては、それが仕事の都合によるもので、通勤時間が1時間以上短縮される場合は、費用はもちろん、引っ越しの際に破損した物の修理代、手伝ってくれた人へのチップ、不動産仲介手数料、住居の下見のための交通費(自家用車の場合0.30ユーロ/km)、引っ越し前後で二重に支払った賃貸料(状況による)、引き払う住居の改装費、車の登録変更費用、電話契約の変更費用、子どもが学校に通えない期間があった場合には、学習を補完するための費用などが控除されます。また、医師の証明書があれば健康上の理由で引っ越しが必要になった場合にも上記項目が控除されます。

プライベートな理由での引っ越しの場合も、上記のものが控除対象となりますが、控除額には制限があります。その他については、以下のウェブサイト内にある確定申告チェックリストをご参照ください(www.dj-finanz.de)。控除対象になるかどうか分からない場合は、確定申告支援協会などで聞いてみることをお勧めします。

申告には証拠書類が必要です。自家用車での交通費などは、自分で記録しておきましょう。確定申告用に毎年1冊ファイルを用意して、そこに項目別に証拠書類(レシートなどはA4の紙に貼り付ける)をすべてファイリングしていけば、その年の最後には自動的に提出書類がまとまるので、後から書類を探す手間が省けます。

確定申告は自分で行うこともでき、市販のソフトウエア(約15ユーロ~)を使えば、作業もより簡単。自分で行う場合は毎年5月末までに前年分を提出します。確定申告支援協会などを通す場合は期限を延長できます。一度確定申告を行うと、基本的に毎年行なわければなりません。

なお、証拠書類は10年間保存しなければなりません。感熱紙に印刷されたレシートなどは文字が消えてしまうので、コピ−を取ったり、写真を撮っておくと良いでしょう。


 
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