17 法定健康保険のエクストラサービス
現在、ドイツでは約7000万人が法定健康保険に加入しています。AOKが法定健康保険会社の代名詞のように思われている方もいらっしゃるようですが、実際には131もの保険会社があります。どの会社も、保障内容や料金は法律で定められているため一律ですが、それ以外のエクストラの保障内容やボーナスプログラム、キャッシュバック、カスタマーサービスなどに、各保険会社の違いが出ています。
その内容は、例えば法定以外の保障内容を含んだり、追加料金を払うことで追加保障を得られたり(Wahltarif)、年1回の歯のクリーニングが無料になるといったようなことです。キャッシュバックには、加入していることで得られるものや、法定健康保険が費用を負担する検診を定期的に受けることによって得られるものがあります。検診の内容は、35歳以上で2年に1回の健康診断、女性は20歳以上、男性は45歳以上でがん検診、年1回の歯の検診、子どもの定期健診などです。また、法定健康保険の保障内容を補完するための追加健康保険に加入することや、非喫煙者であること、標準体型であること、標準体型でない場合はスポーツジムなどで定期的に運動をしていることによって得られるキャッシュバックもあります。
*標準体型=BMI数値が18以上27以下、BMI数値=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
キャッシュバックの合計は、子どものいる家庭では年間数百ユーロに上るケースもあります。検診などによって病気を予防したり早期発見をすることができ、その分医療費を節約できるために、保険会社ではキャッシュバック・プログラムを用意し、検診を促しているというわけです。中には、キャッシュバックではなく、旅行やキッチン用品を提供している保険会社もあります。
また、代替ガン療法やアーユルヴェーダ、ホメオパシー、オステオパシー、リフレクソロジー、指圧などの代替療法の適用をある程度まで保障していたり、ヨガや腰痛予防コース、禁煙やアルコール減量プログラム、ストレス対処法セミナーなどを提供していたり、保養地での療養に対して補助金を出しているところもあります。ただ、医師の診断や処方せんが必要なこともありますので、お確かめください。
皆さんが加入している保険会社でも、何らかのプログラムを用意していると思いますので、郵送で届くパンフレットやホームページなどをチェックしてみてください。せっかく便利なプログラムがあっても、利用しなければもったいないですよね。キャッシュバックが小切手で送られてくることもあり、これは銀行で換金しなければ意味がないですし、検診などでスタンプを集めていても、提出しなければキャッシュバックは受けられません。一度やってみれば、少しの手間でお金が戻ってくることが分かるはずです。
もし、以上のようなエクストラ・プログラムが十分にない場合には、保険会社の変更も検討すると良いでしょう。健康保険は今後何十年も加入し続けるものですから、変更によるメリットを考えることは十分に意義があります。法定健康保険は、通常は保険加入19カ月後以降に54歳以下であれば、丸2カ月の解約期間をもって、ほかの保険会社への変更が可能です。プライベート保険と違って加入時の健康状態をチェックされることはなく、変更は書面のやり取りのみで比較的簡単にでき、必ずしも支店に足を運ぶ必要はありません。手順としては、①新たな保険会社への加入申し込み、②それまでの保険会社の解約、③解約証明が届いたらそれを新たな保険会社に提出、④本加入となります。法定健康保険会社はインターネットでも検索・比較できますし、直接私どもまでご連絡いただければ、ご紹介いたします。