32 生命保険(死亡保障)
ドイツでも日本でも、保険は損害保険と生命保険に大きく分けられます。損害保険の種類としては、賠償責任保険や家財保険などがあります。
日本では死亡保険のことを生命保険と呼ぶこともあるようですが、生命保険(Lebensversicherung)のカテゴリーには、年金保険(Rentenversicherung)、障害年金保険(Berufsunfähigkeitsversicherung)、死亡保険(Risikolebensversicherung)などがあります。
● 掛け捨て型と積立型
日本ではよく、掛け捨ての生命保険、掛け捨てではない積立型の生命保険という言い方をして、一見、積立型の生命保険の方が得であるかのように提案し、販売しています。しかし、これは単に掛け捨ての死亡保険などと積立保険を組み合わせているに過ぎず、商品を複雑化して中味を見えにくくしながら、保険会社が売りやすいようにしているという面があります。通常、掛け捨ての保険と貯蓄は、分けたほうが貯蓄効率も良くなります。
実際、ドイツでは死亡保険は単独商品であることが多く、基本的に掛け捨ての保険です。また、日本ほどポピュラーではなく、しかも高い保障額を設定しません。それだけ経済的に自立している女性が多いから、ということでしょうか。もし配偶者が亡くなっても、子どもの自立後に自身の収入で生活できるのであれば、死亡保険は実質必要ありません。
● 保障額の設定
死亡保険の保障額には、固定型と逓減(ていげん)型の2種類があります。固定型は保証期間中の保障額が一定で、逓減型は期間中に保障額が漸次下がっていきます。年月とともに、子どもの養育期間や住宅ローンの借入高は減っていきますし、遺族年金やその他の年金保険類があれば、その返戻(へんれい)金額も上がっていくので、その場合、保障額がだんだんと減っていく逓減型の方が実情に合っています。ただし、大きなインフレがあれば、実質的な保障額の価値が減ってしまうというリスクもあります。また、子どもがまだ小さい場合には、働き手のみではなく、子育てをするパートナーにも保険を掛けることがあります。
加入の際は、保証期間と保障額を設定します。保障額を設定するには、まず万一のときに、毎月最低どのくらいのお金が、どのくらいの期間必要になるかを考えます。ドイツで被雇用者として働いている場合には、遺族である配偶者が45歳以上であれば国から遺族年金が下りますが、45歳未満であれば遺族年金はほとんどありません。受給できる遺族年金の額は給与額と加入年数によって異なり、年次年金通知(Rentenbescheid)から割り出すことができます。
遺族年金を考慮した上で、例えば毎月1500ユーロを20年間必要とする場合、必要なお金の合計は、1500ユーロ×12カ月×20年間で36万ユーロとなります。もし、受給額を1%の利子がつくところに預けながら毎月1500ユーロを引き出すとすると、必要額は約32万7000ユーロとなります。
● 持病や治療歴がある場合
保障金額と期間が定まれば毎月の保険料が決まりますが、死亡保険に加入する際は、さらに自己申告の健康チェックが必要となります。例えば、過去5年以内に治療歴があれば、追加の保険料がかかります。生命保険には関係ないと思うような軽いアレルギーの診断や治療歴でも保険料は上がりますので、加入を検討されている場合は、治療は加入後にした方が有利なこともあります。