44 フリーランス・自営業・副業と健康保険
ドイツでフリーランスや副業をする場合、まずネックになるのが健康保険です。ドイツに滞在する以上は健康保険に加入する義務を負っています。健康保険には、大きく分けて法定健康保険とプライベート健康保険がありますが、加入後に簡単に変更できるものではないので、その選択や加入時期について注意を払わないと後から非常に高くつくことがあります。
法定健康保険は、どこの保険会社でも保険料はほとんど変わりません。補償内容もほぼ同様で、一般的な治療については100%補償され、自分で立て替える必要もなく、保険会社が直接支払ってくれます。治療歴に関わらず加入でき、扶養家族は無料で加入できます。ただし、歯のマテリアル代は約2割まで、また補償される地域に「欧州内」など制限もあります。これらは追加保険で補償可能です。
プライベート健康保険は、一般的には法定健康保険よりも補償内容は良いのですが、一人一人が加入し、それぞれに保険料が掛かります。また、病歴・治療歴によっては加入できなかったり、追加料金が掛かったりする場合があります。
法定健康保険は収入に応じた保険料となるので、老後は法定健康保険の方が有利になり得ますが、55歳以降はプライベート健康保険からの変更ができなくなります。しかし、逆に言えば55歳前まではプライベート健康保険に加入しておき、55歳になる前に法定健康保険に変更することも不可能ではありません。
● ドイツにフリーランスとして移住する場合
最近は日本人でも、フリーランスやインターネットを利用して仕事ができる手に職のある人が、ドイツに移住するケースが増えています。
配偶者や子どもがいる場合、法定健康保険であれば収入のない(低い)主婦や子どもは無料で加入できるので、料金的には有利なことがあります。法定健康保険の毎月保険料(介護保険料を含む)は、毎月の収入が約2180€までは約380€、それを超えると収入の約17.5%です。毎月3000€の収入では525€ということになります。毎月の収入が4200€以上の場合は最高保険料の約740€が適用されます。4人家族以上の場合は法定健康保険の方が、3人家族だとプライベート健康保険の方が毎月の保険料は安くなり得ます。
プライベート健康保険の保険料は、加入時の年齢や条件にもよりますが、大人はおよそ250~350€から、子どもは約100€からとなります。
フリーランスとしてドイツに移住する場合、366日以上の滞在ビザを取得しないと法定健康保険に加入できません。通常、最初にもらえる1年(365日)のビザではたったの1日足りないがために加入できないので、その点を外人局でアピールする必要があります。
法定健康保険への加入は、滞在ビザの開始日からとなりますが、その開始日は税務署へのフリーランス・自営業登録よりも1日以上前でなければなりません。つまり、ビザを取得する前や、ビザを取得した日に税務署に届けを出すと、法定健康保険に加入できなくなってしまうのです。税務署への届け出は、ビザ取得の翌日以降に行うものと覚えておきましょう。
その点を知らない周りの人(弁護士や税理士を含め)から、「すぐに税務署に届け出ないといけない」とか、「フリーランスは法定健康保険に入れない」とアドバイスを受けるかもしれませんが、いくつかの条件を守れば法定健康保険に加入することは可能なのです。