ジャパンダイジェスト
意識改革から始める資産運用

ドイツでお金と上手に付き合う方法

山片 重嘉山片 重嘉 (やまかたしげよし)
ファイナンシャルアドバイザー

1970年生まれ。98年に渡独、文化交流や持続可能農業のプロジェクトに携わる。また、食と健康のアドバイザーとして講演活動などに勤しむ。その後、ファイナンシャルアドバイザーとして独立。個人・法人へのアドバイスを行っている。人生のテーマは、健康とお金を切り口に、豊かな生き方について考えること。

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KSK:芸術家のための社会保障

47 KSK:芸術家のための社会保障

ドイツには芸術家社会保障(Künstlersozialkasse、以降 KSK)という、芸術家や著作家を援助するための社会保障システムがあります。

フリーランスを始める場合、通常は健康保険料が割高になり、それがフリーランスとして自立することのネックになりますが、KSKに加入すれば健康保険料と法定年金保険料の半額をKSKが負担してくれるので、収入の多くない芸術家・著述家にとっては有利な制度です。

従業員の場合、社会保障費は労使折半により雇用主が半分負担します。雇用主はボランティア精神から社会保障費を負担するわけではなく、雇用すれば支払いの義務のある人件費ですので、雇用主負担を含めた給与(額面給与+20%)がその従業員の本来の収入であるともいえます。これに対してKSKの場合は、自分の収入とは全く別に、国に社会保障費の半分を負担してもらえるわけです。

また、社会保障費を払うのでリースター補助金受給の権利も得られ、特に子どもがいるとより有利です。例えば2008年以降生まれの子どもが二人いて年収約2万ユーロまでの場合は、年間自己負担60ユーロで年間754ユーロの補助金を受給できます。

KSKに加入した場合の社会保障費の自己負担は、法定健康保険料、法定年金ともに収入に対して約10%、合計約20%弱となります。健康保険料は掛け捨てですが、法定年金は将来自分の年金として受給します。保険料算出の基準となる収入は毎年年末に次の年の見込み収入を自己申告します(場合によっては納税通知の提出が必要になることもあります)。KSKは芸術家・著述家にとってはありがたい制度ですが、それだけの予算も必要とあって、常に批判にさらされています。今後、新規加入基準が厳しくなるということもあるかもしれません。KSKの対象者となるのは、音楽家・画家・彫刻家・ダンサー・写真家・デザイナーなどの芸術家に加え、ジャーナリスト・著作家などです。

加入条件

上記の職業としての年収(見込みまたは数年以内の見込み)が 3900€(月平均325€)以上あること

上記の職業が収入の大部分を占めていること

ドイツ国内の顧客に対しての仕事もしていること。ドイツに住んで、仕事(作業)をしていても、顧客が全てドイツ国外である場合には加入できません

写真家の場合、アート・広告写真などは対象となりますが、ウエディングフォトや証明写真などは対象外です

翻訳家の場合、仕事の大部分が映画の翻訳など芸術関係である必要があります

Web デザイナーの場合、デザインが仕事の大部分である場合は対象となりますが、Web サイト作成・管理の仕事がある程度以上あると対象外となります

学生の場合、週20時間以上仕事をしていること

有効な滞在ビザがあること

KSKへの申請はサイトからダウンロードした申請書とともに、下記の資料を紙面で用意します。

アーティストとしての仕事内容を証明できる作品、ちらし、ホームページ、記事、展覧会やコンサート情報など

収入を証明するための請求書と銀行の入金証明

推薦状

請求書は仕事の内容や、アーティスト収入の割合を審査されますので、発行する請求書の記述内容にも気をつける必要があります。

 
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