59 経済危機やインフレをチャンスに変える投資
2008年秋のリーマンショックをきっかけとして世界の株価は大暴落し、2017年のピーク時からはおよそ半値となりました。その後、たった半年後の2009年3月にはまた株価は上昇をはじめ、それから9年が経とうとしています。アメリカの代表的な500社の平均株価指標であるS&P500 はその間に3.5倍になっています。
現在は株価、不動産、債権、仮想通貨、アート、クラシックカー、すべてが過去最高値を付けているバブルです。その裏ではリーマンショック以来、ドルやユーロ、日本円は刷られ続け、通貨供給量は4倍ほどに増えていますが、それでも中央銀行が適度と考えるインフレ目標には到達していません。このようにゴールドなどの裏付けのない法定通貨(フィアット通貨)が増えることにより、いずれ大きなインフレが起きないという保障はありません。
どちらにしてもバブルはいずれ弾けます。それが今年なのか数年後なのかはわかりませんが、今までのバブルよりも大きなエネルギーを溜め込んでいるので、次のバブル崩壊は2008年よりも大きなものになるかもしれません。しかし大きな危機はそれにちゃんと備える者にとっては、チャンスにもなり得るのです。
● 投資の基本を知り、危機に備える
では危機をチャンスに変える、賢い投資の基本とは何でしょうか。株式投資の場合、銀行に相談に行き購入するのが一般的ですが、銀行も商売なので、必ずしも買い手のことを第一に考えたアドバイスをしてくれるとは限りません。そのため、すすめられるがままに景気過熱時に一括購入をしてしまうのは実はリスクが高いのです。
株式投資の基本は「安く買って高く売る」。つまり経済危機の真っ只中、株価が半額セールになっている時こそが買い時です。ETF(上場投資信託)などの手数料の低い商品のほうが有利ですが、運営上、銀行がそのような商品をすすめてくれることはありません。このように資産運用の基本を知っていれば、自分で納得のいく投資ができるのです。
また、経済危機の際にはゴールド価格は上昇する傾向があります。インフレ率よりも利率の低い現金は、今も日に日に目減りしていますが、今後大きく価値を減らす可能性もあります。そのような時に価値の保存ができるのはゴールドやシルバーなどの貴金属、またビットコインなど一部の仮想通貨である可能性があります。
ビットコインはリーマンショック直後の2009年1月に、現在の金融システムに対するアンチテーゼとして生まれました。ゴールドの埋蔵量に限りがあるように、ビットコインの総量も限られていて、国家の信用だけで無限に発行できる法定通貨とは異なり、多くの人が求めれば価値が上がる価値の保存機能のためにインフレ対策となるかもしれません。ビットコインは実際に、キプロスの預金封鎖、ジンバブエのインフレ、ベネズエラの政情不安などで大きく買われています。ただし、仮想通貨は全く新しいものですので、実際にどのような値動きになるかは分かりません。
フィジカル・ゴールドや仮想通貨は税制上も有利です。ドイツでは1年以上保持すれば、売却益に対する税金がかかりません。大きなリターンを得た時に税金がかからないというのは非常にメリットが大きいのです。
同じゴールドでもETFのような金融商品ではキャピタルゲイン税がかかります。金地金または、Xetra- Gold(WKN:A0S9GB)という金融商品だけは、1年以上保持することで売却益が非課税になります。
来るべき経済危機やインフレに備え、貯蓄の一部をゴールドやビットコインに分散して備えることでリスクを軽減し、ピンチをチャンスに変えることができるかもしれません。