69 これからどうなる、ドイツの法定年金!?
ドイツでは11月8日に法定年金に関する重要な法案が可決され、「収入の48%の年金を2025年まで維持」という見出しが紙面を賑わせました。
これを見ると収入の半分近くの年金を将来もらえるように錯覚しますが、そうではありません。このような年金受給額の目安で使われるモデル(Eckrentner)は、平均収入(約2500ユーロ)の人が45年間年金を収め(年金ポイント45)、標準受給年齢の67歳で受給開始した場合にもらえる年金の目安です。この年金額を標準年金(StandardrenteまたはEckrente)と言います。実際には45年間年金を収める人は多くなく、より期間が短ければそれだけ受給できる年金額は低くなります。今回の法律でもこの点は増強されるわけではなく、今まで下がり続けてきた年金レベルをあくまで現状維持しようというものです。
● 新しい法定年金制度で強化される内容
その他にこの法律で強化される内容は下記の通りです。
・労使合わせて現在18.6%の年金保険料は、2025年までは最大20%までに制限。年金保険料は労使折半なので従業員の負担は2025年までは最大で給与額面の10%までということに。
・1992年より前に生まれた子どもがいる母親の年金は0.5ポイント増額されます。1年で1ポイントですのでおよそ半年分余計に年金保険を収めたと同等に計算されます。
・障害年金の増強:事故や怪我により仕事ができないほどの障害が生じた場合、現在は62歳3カ月まで働き続けたとしたら受給できるであろう年金額が障害年金受給額として設定されていますが、今後は65歳8カ月に延長。この法律は2019年から施行されます。
・年金保険・健康保険などの社会保険料の従業員負担が軽減されるミディジョブの上限が、毎月850ユーロから1300ユーロに引き上げられます。毎月収入が1300ユーロを超える場合には標準の社会保障費が給与から天引きされます。450ユーロまでのミニジョブでは、従業員側に所得税はかからず社会保障費の義務はありませんが、3.6%の任意社会保障費は支払っておくことをおすすめします。それにより少額でも自分名義の法定年金の受給が可能です。
● 今後ドイツで豊かに暮らすために知っておくこと
さて2025年までの年金強化法案は可決されましたが、強化策の実施にあたっては2025年までに300億ユーロ以上の財源が必要ということで野党からの反発もありました。また2026年以降、年金受給開始年齢を現在の67歳から70歳に引き上げる、保険料の引き上げや受給額の見直しの可能性がなくなったわけではありません。
いずれにしても今後貧困老人が増加してしまうことは見込まれています。そこで政府は所得税控除のできるリュルップ年金(Basisrente)、特に子どものいる母親に有利な補助金の付くリースター年金(Riesterrente)、所得税と社会保障費が控除できる企業年金、キャピタルゲイン税が半減されるプライベート年金といった制度を用意して個人年金加入を促し、貧困や犯罪が軽減されることを目指しています。
現在は銀行預金利率が約0.1%に対しインフレ率約2%。現金を持っていても実質は物価に対して1.9%目減りする時代です。税率の高いドイツでは一人年間9000ユーロの基控除枠を超えて収入がある場合には、税金控除制度により15〜40%もの所得税還付を受けられます。所得税法により定められた制度で、投資よりも確実かつリスクなしにリターン(所得税還付や補助金)が得られるので、利用しない手はありません。