7. 初めてオペラを観るのなら
パリ・オペラ座(ガルニエ宮)
以前、ウィーンにいた知り合いの人が、生まれて初めてオペラを観に行きました。演目はリヒャルト・シュトラウスの「エレクトラ」だったそうで、観終わった後の彼の感想を聞くと、「いやあ、オペラってすごいんだね。もう二度と観に行かないかも……」でした。それもそのはず。この作品の内容は、ギリシャ時代の王権をめぐるドロドロとした復讐劇で、音楽も激しく、初めて観るには相応しくありません。オペラに限りませんが、第一印象が大切なのです。
三大オペラと呼ばれる「椿姫」「蝶々夫人」「カルメン」はさすがに良く出来た作品ですので、初めてオペラ観劇をされる方にはぜひお勧めします。その他、入門編として観やすく、内容も充実しているオペラをいくつかご紹介しましょう。
まずはオーストリアのモーツァルトの作品から、「フィガロの結婚」「ドン・ジョヴァンニ」。これらは原作が優れており、見応えは充分です。最晩年作の「魔笛」は、筋書きは支離滅裂ながらも音楽が素晴らしく、子どもも楽しめます。
オペラといえばイタリアです。ベートーヴェンも嫉妬したといわれるロッシーニからは、「セビリアの理髪師」「チェネレントラ」(シンデレラ)。オペラ史上、頂点に立つヴェルディからは、先程の「椿姫」をはじめ、「リゴレット」「アイーダ」「イル・トロヴァトーレ」「仮面舞踏会」など。続く次世代のプッチーニからは、「ラ・ボエーム」「トスカ」「トゥーランドット」。また、同時代のマスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナ」とレオンカヴァルロの「道化師」は、よく組み合わせて上演されます。
フランスからは、前述したビゼーの「カルメン」をはじめ、マスネーの「ウェルテル」、オッフェンバッハの「ホフマン物語」。ドイツではやはりワーグナーが有名ですが、「さまよえるオランダ人」「タンホイザー」「ローエングリン」といった、伝統的な手法で(独唱・重唱・合唱をそれぞれ独立して)作曲している作品が観やすいでしょう。
そして観劇される際には、事前に「あらすじ」を読み、CDも聴いて音楽に慣れ親しんでみてください。その方がより一層舞台を楽しめます。最近は便利なもので、観劇する予定のオペラハウスのホームページを検索すれば、演出や舞台装置などの詳細まで知ることができます。