ジャパンダイジェスト

水彩画からのぞく芸術の世界 寄り道 小貫恒夫

34. ウィーンの中央墓地

34. ウィーンの中央墓地

ブラームスの墓(ウィーン中央墓地)
ブラームスの墓(ウィーン中央墓地)

空路ウィーンへ到着し、「シュヴェヒャート空港」から街へ向かうとき、一番先に通過する観光スポット、それは何と墓地です。

墓地が名所というのも実にウィーンらしいのですが、さすが“音楽の都” と言われるだけあって、ここ中央墓地(Der Wiener Zentralfriedhof)にはウィーンで活躍した幾多の大作曲家たちが眠っています。またこの墓地は映画『第三の男』(1949年公開、キャロル・リード監督)のラスト・シーンの舞台としても有名です。市街地からは6番か71番の路面電車で向かうのですが、この中央墓地だけで停留所が4つもある広大な墓地。墓地の中をバスが巡回しているほどです。

音楽家のお墓参りには墓地の正面入り口に位置する「Zentralfriedhof 2. Tor」で下車し、中央に建っている大きなドームを持つカール・ルエーガー記念教会に向かって並木道を進みます。教会の少し手前を左に折れると、そこには名だたる作曲家のお墓が目白押しに建っています(Gruppe 32A地区)。

ちょっとした広場になっていて、中央にはモーツァルトの仮のお墓があり(最初に埋葬された聖マルクス墓地が共同墓地だったため、遺体がどれだか分からなくなったのです)、その後ろにそびえ立つ(メトロノームのような)オベリスクのお墓にはベートーヴェン、右隣にはシューベルトが眠っています。このお墓も元々は街中のヴェーリンガー墓地(現在はシューベルト・パーク)にあったのですが、後にここへ移されました。ベートーヴェンを崇拝し、葬式で彼の棺を担いだシューベルトも、後を追うように1年後に亡くなってしまいます。没後はベートーヴェンの傍に埋めて欲しいと切望していましたが、それが実現され、ここでもお隣同士です。

さて、小道を挟んでシュトラウスⅡ世、その右隣にはブラームスのお墓が建っています。音楽スタイルが正反対の二人ですが、意外と仲が良かったそうです。ドナウの流れをイメージした若い女性が寄り添うシュトラウスに対し、ブラームスは頭を抱えるようにうな垂れ、今なお悩んでいるようです。彼らの背中側にはシュトラウス父とライバルだったランナーが仲良く並んでいます。他にもズッペを初め、グルックやヴォルフにシェーンベルクなど枚挙に暇がありません。

作曲家だけでなく、ウィーン・フィルの名コンサートマスターだったボシュコフスキーや名歌手ロッテ・レーマンなども眠っていますし、サリエリやベートーヴェン唯一の弟子チェルニーなどは入り口近くの0地区に眠っています。 音楽愛好家にとって、一つまた一つと偉大な音楽家の名を発見する喜びは、ゾクゾクするほどの感動。それはまるで宝探しのよう……。

 
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小貫 恒夫

小貫 恒夫 Tsuneo Onuki

1950年大阪生まれ、武蔵野美術大学舞台美術専攻。在学中より舞台美術および舞台監督としてオペラやバレエの公演に多数参加。85年より博報堂ドイツにクリエイティブ・ディレクターとして勤務。各種大規模イベント、展示会のデザインおよび総合プロデュースを手掛ける傍ら、欧州各地で風景画を制作。その他、講演、執筆などの活動も行っている。
www.atelier-onuki.com
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