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水彩画からのぞく芸術の世界 寄り道 小貫恒夫

37. ウィーン近郊のルストでサイクリング

37. ウィーン近郊のルストでサイクリング

湖の水上小屋(ノイジードラー)
湖の水上小屋(ノイジードラー)

ウィーンには、5月半ばから6月にかけて芸術週間が開催されているのでよく滞在するのですが、演奏会やオペラの予定がない日はちょっと遠出をするのも楽しいものです。

芸術の街、ウィーンから南東へ約40km、ハンガリーとの国境沿いにルスト(Rust)という小さな町があります。ここはワイン造りが盛んかつ、コウノトリが巣を作ることでも有名で、建物の煙突の上に「これって飾り物?」と思うほどよく見かけます。

町も古風で趣のある佇まい、それに料理がまた美味しい……! 一般的なドイツ料理とほぼ変わらないのですが、格段に美味しく感じられます。

また隣接するノイジードラー湖(Neusiedler See)は琵琶湖の半分ほどの大きさですが、野鳥の楽園としても知られています。水深は浅く、深い所でも2mほどしかないそうで、岸辺近くから、まるで林のように葦が生い茂っています。

ここは地形がフラットなのでサイクリングをするのも快適です。市役所があるラートハウスプラッツに面した場所には、とても親切なオジサンが経営するレンタル・サイクリング屋さんがあります。自転車にまたがり、まずは人けのないゼーシュトラーセをヨットハーバー目指して走ります。

途中には葦の茂み越しに色とりどりの船小屋がひっそりと点在していて、何だかノスタルジックな雰囲気を醸し出しています。しばらくすると、これまた葦林の向こうに住居のような建物が見え隠れして、「これって水上集落?」と思いよく見ると、家々は桟橋で繋がっているためまるで迷路のようになっていて、とても不思議な光景です。ここは舟遊びを楽しむ人達の家だと思われますが、ちょっとした異空間を演出しています。

さて、一度町へと引き返し、今度は国境に接した湖上劇場があるメルビッシュ(Mörbisch)を目指します。6〜7kmほどの道はブドウ畑が点在するのどかな風景で、初夏の風に吹かれながらのサイクリングはこの上ないほどの心地よさです。

ルストに戻り、勢いのまま飲み屋に飛び込み、ワイン酒場であるホイリゲにも関わらずビールを注文……。それがワインへと移り、いつの間にか差し入れられたシュナップスに手が伸びる頃にはすっかり上機嫌です。気が付けばとっくに最終バスが出た後で、仕方なくこの2階にある宿屋で一泊することになりました。

 
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小貫 恒夫

小貫 恒夫 Tsuneo Onuki

1950年大阪生まれ、武蔵野美術大学舞台美術専攻。在学中より舞台美術および舞台監督としてオペラやバレエの公演に多数参加。85年より博報堂ドイツにクリエイティブ・ディレクターとして勤務。各種大規模イベント、展示会のデザインおよび総合プロデュースを手掛ける傍ら、欧州各地で風景画を制作。その他、講演、執筆などの活動も行っている。
www.atelier-onuki.com
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