40. マーラーの作曲小屋 番外編-アルタウス湖
アルタウス湖の船小屋
オーストリア、アッター湖畔のシュタインバッハを後にマーラーがブラームスを訪ねたように、私もバート・イシュルを目指しました。
バスは途中のヴァイセンバッハで乗り換えるのですが、時刻表をよく見ると「Rufbus」と記載があり、乗車時間の1時間前に電話連絡するようにと書かれていました。人気のないバス停、半信半疑で待っていましたが、来ました来ました、威勢の良いご婦人が運転するミニバンが時間通りやってきました。乗客は一人にも関わらず結構な山道を延々と進み、バート・イシュルまで連れて行ってくれました。まるでリムジンサービスのようで、これにはいたく恐縮しました。
さてバート・イシュルは皇帝フランツ・ヨゼフが愛した保養地なので、それなりに味わいがあるのですが、早々にこの日の目的地であるアルタウスゼーに向かいました。途中通過するハルシュタットの綺麗な町並みを湖越しに眺めながら、まずはバート・アウスゼーを目指します。ここでバスに乗り換え、揺られることほんの15分ほどで小さな村へ到着しました。
アルタウスゼーに来たかったのは、この湖畔に建つワグナー家(作曲家ワグナーとは何の縁もない人)に招かれたブラームスが、バート・イシュルで完成させたばかりのピアノ三重奏2番と弦楽五重奏を試演しているからです。この館はホテル「Seevilla」として現存し、演奏した部屋は「ブラームス・サロン」と冠されたレストランになっていて湖を眺めながらゆったりとした時を過ごす事ができます。ブラームスは途中の保養地バート・アウスゼーに滞在していたクララ・シューマンに会いたかったのかも知れませんね。
その数年後には念願のウィーン宮廷歌劇場に就任しブラームスを崇拝していたマーラーもやってきます。ここでは「子供の不思議な角笛」と交響曲4番という名作に着手しています。へんぴな所にある湖なので訪れる人も少なく、ちょっとした秘境かもしれません。水も透明度が高く、そのまま飲める程だそうです。近年、ジョージ・クルーニー制作の映画「ミケランジェロ・プロジェクト」でラストシーンの舞台にもなったので、少しは知られているかもしれませんね。
ブラームスはクララを、マーラーはブラームスを追っかけているようですが、この現象にはまだ続きがあります。