#6 冬の灯り
今年もまたスイッチを切ったように、ドイツの季節は変わった。ドイツの冬を思うと、何だかのどの奥が詰まったような感じになる。日照時間は極めて短く、空は濁った灰色の雲に覆われていて陰鬱なのだ。この静けさを好む人も、いるにはいるけれど。
そんな冬の始まりのある日、閉店間際のスーパーの特売コーナーでちょっとすてきなものを発見した。それは乾電池で光る電飾で、プラスチック製の電球の中に小さなドライフラワーが入った、ささやかな冬のにぎやかしグッズである。僕はしばし悩んでから、それを買い物かごに入れた。
家に帰ってワクワクでスイッチを入れてみる。不良品である。おまけにレシートはお店で捨ててきてしまった。まずい。僕は涙ながらにスーパーへと走った。レジで事情を説明すると、「レシートが無ければ返品も交換もできない」と言われてしまう。そう、ここはルール順守の国ドイツ。レシートなしでの交換などあり得ない。悲劇だ。
しかし、店員さんが上司に事情を説明したらなんと「ゴミ箱の中からレシートを探そう」という運びになる。そうして大人三人がかりで、ゴミ箱を漁る、漁る。クシャクシャのレシートが一枚一枚、机の上に広げられていく……。
そしてついに、そのレシートは見つかった!! 妙な達成感があって、皆に嬉々とした笑顔が灯る。ドイツではこういうとき、なかなかクールな対応を受けることが多いのだけど、その夜は何かが違っていた。帰り道にふと空を見上げたら、大きな満月だ。冬も悪くない、そう思った。