#7 シュニップ&シュナップ
昨年からクラインガルテン(市民農園)を借り始めた。小屋付きの小さな庭が160軒ほど集まった敷地は、地元の協会によって管理されている。庭を借りるにはさまざまなルールがあって、その一つに「年に6時間のお勤め」がある。これは、クラインガルテンの運営にかかる野暮用を協力して片付けましょうというものだ。
朝は早く、8時集合。お勤めに初参加ということもあって、その日僕は少し緊張していた。園芸初心者の僕は、とある老婦人とペアを組み、しばらく借り手のいない庭の薮を刈ることに。ベテラン婦人の指示通りに、僕がハサミで木々を切る。その指示は的確にして迷いがない。「この枝はこの高さでシュニップ!ここは根本からシュナップ!そう、なかなか上手よ!」。そんな風に剪定はリズミカルに進んだ。深い薮が庭へと形を変えていくのは、なかなか気持ちが良かった。ところで、「シュニップ・シュナップ」という言葉を初めて耳にした。これはどうやら、ハサミで物を切るときのオノマトペ「チョキ・チョキ」に当たるものらしい。婦人の口から発せられるその音には、巨大なハサミの刃が擦れ合うような魔女的な響きが感じられた。
その日の午後、早速ホームセンターで剪定バサミを買い、自分の庭の木々を剪定した。シュニップ・シュナップ。剪定を終えて樹形を眺める僕に、通りすがりのおじさんが「いい感じになったな」と一声かけ去ってゆく。すごく楽しい。僕はどうやら深い沼に足を踏み入れてしまったのかもしれない。そんな気がした。