#8 おじいさんのコレクション
前回に続いてクラインガルテン(市民農園)の話。クラインガルテンの土地は市から格安の賃料で借りられるのだが、小屋や植物などの物品は以前の庭主から買い取る仕組みになっている。そうして僕たちは、いくつかの果樹と小さな温室と、古びた小屋を買い取った。
契約が済んで鍵を受け取った初日、ドキドキワクワクで小屋の扉を開けた。するとその中は、おびただしいゴミやガラクタで溢れているではないか……。かびたソファや壊れかけの棚、古いボードゲーム、CD数百枚、飲みかけの酒瓶、ベタベタした何かでフォークが張り付いた皿までもがそのままに残されていた。
僕たちの前の庭主はおじいさんで、年齢的に庭を維持できなくなったらしい。レトロな家具の裏には、東ドイツ人民公社(VEB)のラベルが貼られていたりして郷愁を誘うものがあるが、ともかくこれらを片付けなければ僕らは前に進めない。そんなこんなでひたすらゴミを片付ける日々が始まって、それにはもう思い出したくないくらい随分と長い時間を費やすはめになった。
その中に気になるものがあった。それはミニカーのコレクションである。とは言っても、普通のミニカーではなく、さまざまなビールの広告が印刷されたノベルティ・ミニカーだ。ドイツでは「Werbetrucks」と呼ばれ、愛好家もそれなりにはいるらしい。これはもしやお宝かもしれない。そんな下心で、丁寧に掃除してeBayに出品してみた。……結果として、待てど暮らせど買い手は現れませんでした。人生って甘くないですね。