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第34回 2020年の税法改正

9月上旬、ドイツ連邦政府は税法改正の草案を閣議承認しました。草案には税法に関する改正点が多数盛り込まれています。今回はこの中から重要点を取り上げました。

1)設備投資に対する控除

所得税法第7条gにより、投資控除が柔軟化されます。投資控除は、固定資産の90%以上を事業目的に使用する場合に適用されており、投資資産に対する減価償却を、資産取得や生産の前年度に前倒しして開始するものです。

従来は投資額の40%を減価償却費として前年度に計上することが認められていましたが、改正後はその比率が50%に引き上げられます。来年以降に予定されている設備投資に対して、すでに今年度会計に改正案が反映される見込みで、中小企業の投資意欲を促進することに。控除の適用条件は利益上限額で、営業収入、固定資産、自営業収入など、全種類の収入に対して一括15万ユーロとされます。

2)賞与

賞与など雇用者による一定の給付金は、それが通常の賃金に加えて支給される場合には、賃金税や社会保険料が免除されます。新しく導入される所得税法第8条4項は、免除条件を明確に規定しています。

  • ①賞与は賃金と切り離し、別枠で支給される。
  • ②賞与によって賃金が減額されない。
  • ③支給時点にすでに将来の昇給が合意されている場合、賞与は昇給に代わるものではない。
  • ④賞与が支給されない場合も、賃金は増額されない。

上記の規定により、一定の税制優遇措置を受けることを目的とした給与構成の調整が不可能になります。同規定は、2020年1月1日以降に支給された賞与から適用されます。

3)家賃水準と経費控除

現在の税法は、住居の家賃が現地平均家賃の66%以下であれば、「割引賃貸」(Verbilligte Wohnraumvermietung)と規定しています。割引賃貸で物件を貸している場合、家賃収入に対する必要経費の控除は部分的にしか認められません。2021年からは、割引賃貸に分類される家賃が、現地平均家賃の50%に引き下げられます。

一方、家賃が現地平均の50%以上66%以下である場合には、税務署への申告時にいわゆる「総剰余見込み」(Totalüberschuss-Prognose)を作成し、総剰余が見込まれる場合には、必要経費の全額を控除できます。逆に欠損が予想される場合には、経費を相応に減額して控除します。「総剰余見込み」は、通常30年の期間を想定し、この間の剰余と欠損の推移を考慮して算出するものです。

4)データ交換

2023年1月1日に始まるパイロットプロジェクトで、民間健康保険会社、税務当局、雇用者の間でデータ交換が開始されます。本格導入は、2024年2月1日からです。これまで紙で処理していた賃金税控除手続きが、完全にデジタル化されます。

5)職業別年金基金の保険料

職業別の年金基金に納める保険料は、従来から特別支出として無制限納税義務者に対しては控除が認められていましたが、改正後の規定では、納税義務を一部免除されている納税者にもこれを認めることになりました。2021年1月1日以降に支払った保険料から適用されます。

6)付加価値税デジタルパッケージ(Mehrwertsteuer-Digitalpaket)

付加価値税デジタルパッケージは、2021年7月1日から実施されます。国境を越えた電子商取引分野を対象に大幅な変更を行い、デジタルインターフェースをさらに強化します。今回新たに導入される、「ワンストップショップ」(OSS)は、従来の「ミニ・ワンストップショップ」をさらに拡充するものです。

OSSによる付加価値税の課税手続きは、電子インターフェースを介したEU加盟国への商品供給(オンライン販売など)、EU内の遠隔販売、およびEU域内に居住する個人に対して現地で供給される全サービスを対象とします。EU域内で越境電子取引を行う企業は、OSSを利用することで、売上税(付加価値税)の納税申告を簡素化することができます。同時に、EU域外の第三国から輸入される越境取引において、額面150ユーロまでの商品を対象とする「輸入ワンストップショップ」(IOSS)も導入されます。

7)電気通信サービス

2021年1月1日から、役務受益者の納税義務(リバースチャージ手続き)が、再販業者の電気通信サービス(通信回線のリセラーなど)にも拡大されます。

8)請求書の訂正

請求書に誤りがある場合、税務申告前に訂正することが重要です。前段階税額控除は、請求書が適正である場合か、請求書を訂正した後しか認められません。改正後は明確に法律で規定されます。

上記の改正事項は草案のごく一部であり、相続税法などほかの分野でも変更が予定されています。当社では税法の全分野にわたり、喜んで皆様のご相談にお応えいたします。お気軽にご連絡ください。
(筆者:クリスティーネ・フュッセル)

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