第7回 児童手当と年少者扶養控除
ドイツにおいても日本においても、新生児の出生数は下がってきています。しかし、そうした状況だからこそ、子どものいる家庭に対しては様々な補助や支援措置が設けられています。今回は、児童手当と年少者扶養控除について、またその他の様々な補助規定について、ドイツで生活する日本人納税者の視点からまとめました。
1. 児童手当の受給条件
子どものいる家庭に対する最も基本的な国家補助は、児童手当(Kindergeld)です。ドイツに住所を有する人であれば、原則として誰でも児童手当を申請できます。両親ではなく、片親と子どもだけがドイツに住んでいる場合でも条件を満たします。
ただし、子どもがドイツ国外に居住している場合、例えば父親が期間限定でドイツ駐在となり、妻と子どもは日本にとどまるケースでは、ドイツと日本、両国での「児童手当の二重支給」は受けられません。その際は、子どもが居住する国の法律が優先されます。日本で児童手当が支給されるため(現行では、子どもが3歳になるまで月額一律1万5000円、その後は年齢、出生順位、家庭の所得によって基準あり)、ドイツで児童手当を申請することはできません。
ここで留意すべき点は、日本の児童手当は中学卒業まで、つまり子どもが15歳になると支給が終了するということです。それ以降、ドイツに居住する親元でその子どもが暮らすことになる場合は、子どもがドイツに入国した日から児童手当の受給資格が発生します。
児童手当は、実子はもちろん、里子や養子のいる家庭も支給対象になります。満18歳になるまでは、子どもを持つ全家庭に児童手当が支給されます。義務教育を終えた後、子どもが高等教育か職業訓練を受けている場合は、満25歳まで支給期間が延長されます。つまり、子どもが大学へ進学しても、引き続き児童手当を受給できるわけです。この場合、子どもがアルバイトなどで自分の収入を得ていたとしても、支給条件には影響しません。
児童手当の申請書は、連邦雇用庁のウェブサイト(www.bundesagentur.de)でダウンロードすることができます。児童手当に関する申請・相談窓口である家族公庫(Familienkasse)が、このウェブサイトと連動しています。
2. 児童手当か年少者扶養控除か?
ドイツの児童手当は、第1子と第2子は月額184ユーロ、第3子は同190ユーロ、第4子以降は同215ユーロが支給されます。この額は両親の収入に関係なく、一律です。
ドイツで所得税申告を行うと、年少者扶養控除(Kinderfreibetrag)と受給済みの児童手当を比較して、どちらが納税者にとって節税効果があるのかを査定してくれます。両親と子どもが1人の家庭の場合、年少者扶養控除は両親に対して年間それぞれ3504ユーロ、つまり、総額7008ユーロの控除が認められます。所得に比例して税率も上がるため、年少者扶養控除を適用して納税する方が、受け取った児童手当(184ユーロ×12カ月=総額2208ユーロ)より結果的に節税効果が大きくなる場合があります。
税務署が上記のように判断した場合には、自動的に年少者扶養控除を適用し、その代わりに支給済みの児童手当の年間総額を課税額に加え、これを最終的な所得税納税額とします。つまり、所得税の還付時に児童手当の額が差し引かれることになります。
日本で児童手当の支給を受けている場合も、ドイツでの所得税申告時に年少者扶養控除が認められます。その際には、ドイツではなく、日本で支給された児童手当が同様に扱われます。このように、子どものいる家庭が税制上、常に最大の恩恵を受けられる仕組みが確立しています。
3. その他
一般的な児童手当や年少者扶養控除のほか、ドイツの税法は子どものいる家庭を対象に、様々な補助や支援措置を規定しています。
例えば、子どもが加入しているプライベート健康保険の保険料は、両親の保険料と同様に100%控除が可能です。ただし、これも両親の場合と同様、基礎的な医療行為に対する保険料だけが対象となります。
また、子どもが14歳になるまでは、養育費控除による所得税の減免が可能です。費用総額の3分の2、年間で最高4000ユーロまでが控除されます。これは、子どもをドイツと日本のどちらで養育していても同じです。具体的には、幼稚園やベビーシッターの費用などが控除対象となります。ただし、控除されるのは養育に関するものだけで、支払額から飲食費などを差し引いた部分となります。
子どもが私立学校に通学し、授業料を支払っている場合には、授業料の30%、年間で最高5000ユーロまで控除を受けることができます。この場合の条件は、学校が公立学校と同等の要件を備え、同等の卒業資格を子どもに付与できることです。この場合も、飲食費は控除対象外となります。
このほか、子どもが職業訓練中の場合には、別枠で職業訓練者扶養控除(Ausbildungsfreibetrag)が適用されます。年額924ユーロで、所得税申告時に控除が認められます。2014年から規定が変更され、この控除も子ども自身の収入に関係なく認められるようになりました。
まとめ
子どもをめぐる税政上の措置は広範囲にわたります。当社では、控除の可能性と条件の査定、管轄省庁への申請手続きなどを一貫してサポートします。今回取り上げた項目以外のこと、例えば育児手当(Elterngeld)の税法上の扱いなどについても情報を提供し、最適な税等級をお客様とご一緒に考えた上で策定しています。どうぞお気軽にご連絡ください。
(著:税理士ファブリス・ベーナー)
リンケ・トロイハント会計税理事務所
ジャパンデスク
担当:田中
www.rinke-japan.de
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