第14回 必要経費の控除
個人が被用者として確定申告を行う際には、必要経費を計上することで控除を受けるのが普通です。税務署は所得税査定時に、被用者の標準控除額として一律1000ユーロを設定していますが、実際の経費がこれを上回った場合には、被用者は申告時にいわゆる「書式N(Anlage N)」に経費詳細を明記し、領収書類を添付することによって個別に控除を受けることができます。今回は、被用者が必要経費として計上できる各項目について説明します。
条件
必要経費として査定時に考慮されるのは、職業と直接関係のある全ての費用です。これらの出費は、雇用者から直接精算を受けない限り、確定申告時に控除対象となります。
●業務用品・機器
主に仕事目的で使用する物品。工具、作業服、コンピューター、専門書など。
●仕事部屋
職業行為を営むために、自宅以外の場所がない場合には、年間上限1250ユーロまでを仕事部屋の出費として控除することができます。仕事をする場所が主に自宅である場合には、金額上限なしで控除対象とすることが可能です。
●会費
職業組合やそれに類する協会(医師協会、労働組合など)に支払う会費 。
●職業訓練など
最初の職業訓練終了後に別の職業訓練を受けた場合、最初の学位取得後に二つ目の学位(学士取得後の修士など)取得のために在学している場合、職業訓練またはそれに類する訓練の終了後に進学した場合などに発生した費用。
●就職活動のための費用
就職活動の際に発生した全費用。電話代、コピー代、郵送費、交通費、証明写真の撮影代など。
●二重家計
職業上の理由で二つの住居を構えることから発生した費用(交通費、引越し代、食費、家賃、共益費、不動産業者への手数料など)。
●交通費
自宅から「第一の勤務地」(Erste Tätigkeitsstätte、原則的に毎日勤務する場所)に通勤するための費用は、出勤日1日につき実距離(片道距離)1km当たり0.30ユーロが定額控除されます。実際にどのような手段で通勤したかは問われません。この通勤費控除は、原則として年間4500ユーロを上限としますが、自家用車または社有車を通勤に利用する場合には、この上限を超える額も控除対象となります。
出張時の交通費もまた、雇用者から直接精算されない限り、必要経費として認められます。たとえば任意で参加した研修などの交通費がこれに当たります。公共交通機関を使った場合はチケット代の実費、自家用車を利用した場合には走行距離(往復距離)1kmあたり0.30ユーロが控除されます。
また、二重家計に該当する被用者は、これに関連して発生した交通費について、走行距離1km当たり0.30ユーロが控除されます。第二の住居を構えたときと、引き払ったときの交通費、第一の住居に帰宅する際の交通費(週1回、実際に帰宅した場合のみ)などがこれに当たります。
●研修
職業上の目的で参加した研修、セミナーなどの費用。
●旅費
出張時に発生した費用の中で、上述の交通費以外の宿泊費、食費、その他の諸経費。
●引越し代
転勤時の引越し費用。
●その他
場合によっては、電話代も一部経費として認められることがあります。また語学コースの授業料も、直接仕事との関連が認められる場合には控除されます。同様に、職業上の理由で必要になったコンサルティングの費用(税理士への支払いなど)、通勤中の事故により発生した費用(車の修理代など)も控除対象です。
●まとめ
このほかにも控除対象となる費用があり、また、個々の事例によってその他の経費も控除を認められる場合があります。確定申告時に経費を個別に明記しない場合には、たとえ実際の経費が年間1000ユーロ以下であっても、税務署は自動的に1000ユーロの定額控除を適用します。一方、二重家計や長距離通勤などにより、事前に1000ユーロ以上の経費が発生することが明らかであれば、賃金税減額手続き(Lohnsteuerermäßigungsverfahren)を取ることが可能です。税務所に税額控除 (Freibetrag)を申請し、これが認められれば、雇用者は被用者の給与から毎月天引きする賃金税を減額します。この措置により、発生した必要経費が事実上、毎月考慮されることになり、確定申告後の還付まで待つ必要がありません。弊社では皆様の確定申告を喜んで代行いたします。お気軽にご連絡下さい。
(筆者: 税理士クリスティーネ・フュッセル)
リンケ・トロイハント会計税理事務所
ジャパンデスク
担当:田中
www.rinke-japan.de
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