ジャパンダイジェスト

世界最古の修道院付属醸造所へビール旅

現存する世界最古の修道院付属醸造所をご存じですか? 南ドイツを流れるドナウ河畔にあるヴェルテンブルク修道院付属醸造所(Klosterbrauerei Weltenburg)です。修道院の起源は7世紀。醸造所の一番古い記録は1050年。その頃の日本は平安時代の中期です。バスと船を乗り継がなければたどり着けない秘境の地にあり、春から秋にかけてはクルーズ船が就航しています。ドナウの流れを眺めながらの船旅はこれからの季節にぴったりです。

ヴェルテンブルク修道院へは、インゴルシュタットもしくはレーゲンスブルクから電車で約20分のザールドナウ駅(Saal Donau)へ。15分ほどバスに乗ってケールハイムの船着き場(kelheim Wöhrdplatz)まで行ったら、そこからはクルーズ船で向かいます。夏期間の週末には30分おきに船が出ています。ドナウ川をさかのぼる40分ほどの船旅です。間近に迫る山の上に見えるのはドイツの偉人をまつるために建てられたドーリス様式(ギリシャの美術様式の一つ)のヴァルハラ神殿(Walhalla)と、ナポレオンの支配からの解放を記念して建てられた開放記念館(Befreiungshalle)。途中、川幅が狭くなりドウドウと音を立てる水の流れや、目の前に迫って来る岩肌。ドイツの雄大な自然を肌で感じることができます。

「ビール純粋令」
「船の就航や修道院の開館時間は季節によって異なりますのでお調べの上お出かけください。
www.weltenburger.de

やがて緑の木々の先に、尖塔と赤い屋根が見えてきます。それが今回の目的地です。修道院の石壁には私の頭上よりも高い場所に「HW」の文字と数字が刻まれています。これは洪水(Hoch Wasser)の記録。雪解けの水で川が氾濫する年があるのです。よくこんな不便な場所に修道院を建てようと思ったものだと驚かされます。

醸造所は中庭に面しており、ガラス越しに醸造釜を見ることができます。早速中庭に設けられたビアガーデンでビールを飲んでみましょう。マロニエが大きな葉で木陰を作り涼しげです。ビールはヘレス、ピルス、ヴァイツェンや、季節限定ビールなど10種類以上。一番の人気はバロックデュンケル(Barock Dunkel)です。国内外のビールコンペティションで数々の賞を受賞しています。カラメルのような香ばしい甘さとホップのすっきりとした苦味のバランスが絶妙。ボトルでの販売もあり、たまに街のスーパーマーケットでも見かけることがありますが、やはり造りたてをこの雰囲気で頂くのは何物にも代えがたい幸福です。フードは、バイエルンの伝統的な料理が主で、この地方のキノコやジビエを使った季節の料理がメニューに上がります。

有名なのはビールだけではありません。教会の祭壇は名匠とうたわれたコスマス・ダミアン・アザムの作で、光の効果で天に昇るような錯覚を覚えるドラマチックな造りです。修道院の裏は、牧草のたなびく緑の丘。野の花が風に揺れ、かなたまで広がる青い空に心を打たれてしまいました。

ドイツの豊かな自然とおいしいビールが楽しめるヴェルテンブルク修道院。夏のお出かけにいかがでしょうか?

最終更新 Mittwoch, 25 Mai 2016 12:08  
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