ジャパンダイジェスト

旅ールのすすめ - ビールに会いに旅に出よう

山片 重嘉コウゴ アヤコ 1978年東京生まれ。杏林大学保健学部卒業。ビール好きが高じて2008年から1年半、ミュンヘンで暮らす。旅とビールを組み合わせた“旅ール(タビール)をライフワークに世界各国の醸造所や酒場を旅する。ビアジャーナリストとして『ビール王国』(ワイン王国)、『ビールの図鑑』(マイナビ)、『Coralway』(日本トランスオーシャン機内誌)など、さまざまなメディアで執筆。 www.jbja.jp/archives/author/kogo

アルコール30%!フランケンの技術が光る一杯

ドイツには1500カ所ほどのビール醸造所があるが、そのうち4割程度がバイエルン州に集中している。なかでも州北部に位置するフランケン地方は、大小さまざまな醸造所がひしめき、個性溢れるビール造りが盛んだ。グンツェンハウゼンという街にあるショルシュ醸造所は、超高アルコールビール専門の醸造所。本誌968号のコラム「ビール小話」で紹介した「最強ビール合戦」では、アイルランドの醸造所と世界最強のアルコール度数のビールの座を競ったことで、ビールマニアには有名な醸造所である。この時はアイルランドの「Snake Venom(ヘビ毒)」(67.5%)というビールに最強の座を奪われた。

さて、今回ご紹介したいのはショルシュ醸造所がドイツの伝統的手法にのっとって醸造した「Weizen Eisbock」で、アルコール度数は30%。ラガービールが5%前後、ワインは13%前後、ウイスキーは42%程なので、なかなかの高アルコールだ。当製品はビール純粋令に従って造られたボックビールを18カ月以上かけて濃縮したビールで、アイスボック製法と呼ばれるフランケン地方発祥の特別な方法で造られている。水分がエキス分よりも早く凍結することを利用し、冷却タンクでビールの水分を凍らせて取り除く作業を繰り返すことで、アルコール度数と味わいを凝縮させる。

高アルコールのため長期熟成が可能。王冠部分は、酸化を防ぐためにろうで密封されている。抜栓後も数週間は劣化しないので、時間をかけて味わうのも良いだろう。飲む時は常温に近い15度ほどがおすすめだ。チューリップグラスに3分の1ほど注ぎ、1~2分間空気に触れさせて香りを目覚めさせる。炭酸や泡立ちは弱く、麦のうま味が凝縮されドライフルーツのような濃密な味わい。甘味も感じるが、燃えるようなアルコールのボリューム感がキリリとした印象を与えてくれる。ビールの概念が覆る一杯だ。

www.schorschbraeu.de

vol.97
Schorschweizen Eisbock 30%

Schorschweizen Eisbock 30%

 
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