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旅ールのすすめ - ビールに会いに旅に出よう

山片 重嘉コウゴ アヤコ 1978年東京生まれ。杏林大学保健学部卒業。ビール好きが高じて2008年から1年半、ミュンヘンで暮らす。旅とビールを組み合わせた“旅ール(タビール)をライフワークに世界各国の醸造所や酒場を旅する。ビアジャーナリストとして『ビール王国』(ワイン王国)、『ビールの図鑑』(マイナビ)、『Coralway』(日本トランスオーシャン機内誌)など、さまざまなメディアで執筆。 www.jbja.jp/archives/author/kogo

宗教改革に活力注入、ルターのお気に入りビール

今年は、マルティン・ルターによる宗教改革が始まって500年目の記念すべき年。ルター34歳の1517年10月31日、ヴィッテンベルクの教会の門に打ち付けた「95か条の提題」が無ければ、今のヨーロッパ社会はまったく別のものになっていただろう。

そのルターはビール好きだったことを存じだろうか? 特にお気に入りだったのがアインベックだ。「Der beste Trank, den einer kennt, wird Einbecker Bier genennt(人類にとって最も美味い飲み物はアインベッカービールと呼ばれている)」といったことが伝わっている。この言葉を残したとされる1521年は、ルターがヴォルムスの帝国議会でカトリック教会を否定し、帝国追放を宣言された年だ。アインベックはニーダーザクセン州南部にある都市。ハンザ同盟都市として栄えたこの街には、カラフルな装飾が施された木組みの建物が、その美しさを競うように軒を連ねている。古くから市民による自家醸造が盛んに行われており1378年にはこの街でビールが造られていたという記録が残っている。家々の開口部が高いのは、室内に可動式のビール釜の搬入を行うための名残だ。

アインベックのビールは高品質で知られており、南はミュンヘンやインスブルック、北はロシアやスウェーデンにも輸出されていた。これからの寒い時期に好んで飲まれているハイアルコールビール「ボック」は「アインベック」がミュンヘンで訛ったものともいわれている。1794年にすべての市民醸造所が市営醸造所として統合され、のちに株式会社化され現在に至る。

「Ainpöckisch Bier」は伝統的なレシピで造られたボックビールだ。ホップのグラッシーな苦さとアルコールの温かさが舌の上にどっしりと残り、飲み応えがある。パンチの強いこのビールは度重なる困難に向かうルターに活力を与えたに違いない。

vol. 11
Ainpöckisch Bier

www.einbecker.de

Ainpöckisch Bier

 
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