Dr. Eric Kandel 1929年11月7日ウィーン生まれ。米国籍。コロンビア大学・生化学教授。 ©W-film |
2000年にノーベル生理学・医学賞を受賞し、06年に自叙伝を出版。それを原作にドイツ人女性監督ペートラ・ゼーガーが手掛けたドキュメンタリー映画『In Search of memory / Auf der Suche nach dem Gedächtnis』ではコメディアン的な語りの才能も示し、「脳研究のロックスター」と呼ばれている。
ユダヤ系の両親の下にウィーンで生まれ、ナチス・ドイツのオーストリア併合によって米国へ亡命、11歳からニューヨークで育った。ハーバード大学で精神医学を修めたが、脳細胞への興味からニューヨーク大学医学部大学院で神経医学を修了。この時にフランスからの移民であるユダヤ系医学生デニースと知り合った。現在まで共に歩むことになる才媛の妻である。
研究対象のニューロンは「記憶」を決定する神経細胞。6月にドイツで上映が始まった先の映画では、脳の模型を片手にこのメカニズムを説明し、実験室と私生活を見せ、子ども時代の「記憶」を語る。それは語り手から科学への愛のメッセージのようだ。
初めての訪独の際は緊張したが、反ユダヤ主義についても語れる同僚を見つけ、過去を検証している国なので今は毎年来るのが楽しいと言う。一方、生まれ故郷のオーストリアはナチスに加担した過去を葬り去っていると批判。ノーベル賞受賞のニュースにオーストリアが沸き立ったとき、「私は米国人」とはっきり否定した。しかし「美しいユダヤ人女性がウィーンに戻れば」とも。脳のひょうきんな案内 人である。
< 前 | 次 > |
---|