Dr. med. Philipp Rösler 1973年2月24日ベトナム生まれ。ハンブルクとハノーファーで育つ。医師。FDP所属。10月にメルケル政権の保健相に就任。 ©www.philipp-roesler.de |
スピーチの旨さには定評があり、スピード出世してきた。26歳でニーダーザクセン州FDP(自由民主党)の事務局長、30歳で同州の州議会議員に就任。ここで医師の職を辞し、3年後に33歳で州FDP代表、今年2月には36歳で州政府の経済相へとキャリアアップした。そしてこの10月、第2次メルケル政権の保健相に登用されるや、さっそく保険制度の大改革を宣言したことで、異色のアジア出身政治家に好奇と注目が集まっている。
実の両親はベトナムの戦闘で死亡したらしく、出生名は分からない。カトリック系の孤児院にいた生後9カ月の時、娘2人を持つドイツ人夫婦の養子になって西ドイツにやってきた。ところが4歳の時にその養父母が離婚。今度は連邦軍パイロットである養父に引き取られ、兵舎で兵士に囲まれながら成長する。食事はいつも将校クラブでとった。
「父は出張が多く、僕は鍵っ子でしたが充実していました。父も子育てを楽しんでいましたよ」と当時を振り返る。19歳でFDPに入党したのは、自立と自由の解釈に共感したから。連邦軍付きの医師になったのは、そこが古巣でもあったからだ。
「異人種が大臣にまで進めたのはドイツが開かれた社会であることの証明だ」と言いつつ、自分が持つベトナム的なものは細目と黒髪と低い鼻だけと断言。出生地ベトナムへは、妻から将来の子どもたちにルーツを教える必要があると説得されて、3年前に1度訪問した。その後に生まれた双子の娘たちは今1歳。養父のような父親になりたいという。