Hanacell

世界を動かすビジネスリーダーに聞く!ドイツ発グローバル時代を生き抜くチカラ

海外進出が、大企業だけではなく、中小企業や個人にとっても必要不可欠な選択肢となっている時代。欧州の中心部に位置する地の利を活かして、ドイツを活躍の拠点としているビジネスパーソンが見いだした海外での挑戦の意義や魅力とは?


第5回

日本茶の魅力を世界に発信!
株式会社下堂園 副社長

下堂薗 元下堂薗 元
Hajime Shimodozono

プロフィール


1979年生まれ。慶応義塾大学法学部卒業後、株式会社伊藤園での勤務を経て、2007年より専務取締役として株式会社下堂園に入社。2013年より現職。新業態のカフェ「下堂薗茶舗」や「ボトリング吟穣茶」など、新規事業の立ち上げと人財育成を中心に活動する、鹿児島の若き経営リーダーの1人。www.shimo.co.jp

ドイツ北部、ブレーメンとオスナブリュックの間に位置するディープホルツという小さな町に、突如あらわれる和風の門構え。のれんをくぐった先には、ししおどしが鳴り響く美しい日本庭園が広がっている。日本茶の香りが漂うその場所は、鹿児島の茶商・下堂園を本社とする下堂園インターナショナル。本社から直輸入するオーガニック緑茶KEIKO シリーズを中心に、ドイツの消費者に日本茶の魅力を発信する拠点として今年、設立20周年を迎える。その下堂園で、世界の市場を見据えつつ日本茶の新しい可能性を模索しているのが、副社長の下堂薗 元さんだ。

とがった個性のチカラ

お茶の生産地として、「静岡茶」という巨大看板を前に、鹿児島茶は苦戦を強いられた時代があったという。今、「その地域でしか出せないお茶の味にこだわっていくことが大事」という下堂薗さんにとって、生産量や国内市場におけるシェアなど「サイズ」は、成功を測る最重要ポイントではない。

「規模ではなく、質を追うことが大事になってきている。細かいニーズを拾っていく中で、小さいけれど、とがっているものを世の中に発していくことが、次につながる」。野菜で例えると、それは伝統がブランド力を持つ京野菜のような存在。「世界が狭くなれば、なるほど、その地域にしかできないことが輝きを放つんじゃないか、そう思うんです」と、下堂薗さん。

飲料メーカー勤めを経て、家業に携わるようになったのは、26歳の頃。北海道にあった子会社の代表に就任。しかし、そこを1年半で清算することになる。「経営が何か、考えるきっかけになりました」と振り返る彼は現在37歳。11年前に、「もう二度と会社をなくしたくない」と、決意を固めている。

しかし、立ち向かう市場の現状は厳しい。特に国内の市場は、人口減少にお茶離れ、ペットボトルの緑茶飲料の伸び悩みを受けて、縮小傾向にある。活路はどこにあるのか、海外展開を含めた新規事業によって、日本茶に新たな付加価値をつけることが、下堂薗さんが副社長として担う使命だ。

変わり続ける「伝統」のチカラ

 緑茶

「使命」という言葉は、決して大げさなものではない。緑茶の消費量が下がり、市場価格が下がると、現場で何が起きるのか?

「国内の農家さんの意欲が下がっていきます。農家さんが廃業したり、茶畑があった場所に太陽光発電パネルが設置されたり……。今後、いかに原料としてのお茶の価値を守りながら、お茶の新しい価値、付加価値を見出していけるか。自分たちが、お茶を使った新しい商品やお茶のある生活を作れるかどうかが、農家さんの生産意欲や技術、伝統を守っていくことにつながります」

「伝統」という言葉は、「変わらないものを表現する言葉ではなく、革新し続けるものを指す」と、下堂薗さんは理解している。新規事業を立ち上げる際にも、「当たり前」を取り払う。

「まず、海外展開を考えたとき、急須で飲む文化を伝えるのは大変です。それを、地道に20年間続けているドイツの下堂園インターナショナルの皆はすごいと思う」。けど、と続ける。ドイツの各家庭に急須がないことを問題にするのではなく、ワイングラスに注いで飲むボトル緑茶を開発しようと、舵を切る。緑茶を原材料にしたビールの開発、スイーツへの活用……下堂薗さんは、質にこだわりながらも、いかに気軽に、楽しくお茶との出会いを楽しんでもらえるかを大切にする。

信念を貫くチカラ

 緑茶

「オーガニックであることも最低基準」と断言する。「お茶の生産って、環境負荷がすごくかかっているんです。それをビジネスだから仕方がないとしてきましたが、今は、畑が良くなれば、良いお茶が育ち、世界が良くなると信じています」

下堂園社がEU オーガニック認証を取得したのは1995 年。それ以前は、鹿児島からドイツへ輸出されたお茶は、ドイツ市場で勝負をするどころか、税関を通ることさえ出来なかった。自社農園である「有機農園ビオファーム」の立ち上げを決断したのは、父である社長の下堂薗 豊氏だ。

新規事業の立ち上げの根幹には、いつも社会的な課題をどう解決しようかという意識がある。ワイングラスで飲むお茶のボトルの開発も、その製法を確立した後に公開して、日本茶の普及に貢献したいという。「伝統を日本だけで守れないなら、世界に日本のお茶の魅力を知ってもらえば良い」

今までと違うやり方を通すには、覚悟がいる。しかし、自分たちの経営、営業活動が、「お客様を喜びだけでなく、社会を一歩良くすることにつながっている」と自信を持つ。結果は後から付いてくると、ひたすら強く信じるのだ。

目下、下堂薗さんの関心は、「日本らしいフレーバーティーの開発」。お茶の世界は香りを楽しむ文化。緑茶に合う日本らしい香りで、世界にまた新しい日本茶の表情を届ける。

 
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