自然を感じる公園でもあり、芸術作品を鑑賞する美術館でもある。そんな不思議な場所がデュッセルドルフの隣町、ノイス郊外にあります。その名はインゼル・ホンブロイヒ美術館(Museum Insel Hombroich)。慌ただしい日常から離れ、特別な時間を過ごせる美術館です。
屋外にも大小さまざまな作品が展示されています
訪れたのは、さわやかな青空が広がる秋晴れの一日。エントランスの建物から美術館の敷地に入ると、うっそうと木々が生い茂る勾配のかかった道が続いています。ハイキング気分でその道を下り、林を抜けた先に広がるのは、静かに風が通り抜ける草原と湿原。「インゼル」(ドイツ語で島の意)の名を冠しているのはそのためなのか、外界から隔てられた島に足を踏み入れたような感覚を覚えます。
自然光を使用したヘーリッヒ設計の展示館の内部
1987年にオープンしたこの美術館は、21ヘクタールもの広大な景観保護区を擁し、沼地や湿原、林や草原の中に、小さな島々が浮かぶように建物が点在しています。「自然と並行する芸術」(Kunst parallel zur Natur)をモットーに、景観や建築、作品展示に至るまで美しくデザインされ、その調和を来場者が体感するという美術館なのです。
大きな特徴は、外部からの指示や教えは鑑賞の妨げになるとして、人工照明や案内表示、作品の解説、柵などが設置されていないこと。案内となるのは、入館時にもらえる地図と簡単なハンドブックのみです。初めはとても戸惑いましたが、彫刻家のエルヴィン・ヘーリッヒが設計した展示館に入ると、その意図がよくわかります。自然光のみを使用した建物の中で、雲や木々のゆらぎによって作品はその印象を変え、異なる表情を見せるのです。
展示作品は、創設者であるコレクターのカール・ハインリッヒ・ミュラーの個人コレクションが元になっており、欧州の近代美術、古代から近代までの考古学的遺物、東アジアの美術品などがそろいます。とはいえ、私自身は芸術関係の専門家ではないので、作品を前にして「これはどういう意味だろう?」と頭がフル稼働。解説付きの展覧会にいるよりも、作品そのものに集中していたように思います。
敷地内にあるカフェテリアでは無料で軽食が楽しめます
もちろん人によって捉え方は異なるでしょうが、普段とは違った感覚や感情が揺り動かされる場所であることは間違いありません。広大な敷地をひと回りするだけでも1〜2時間はかかりますので、十分な時間を確保して、ぜひ一度訪れてみてください。
Museum Insel Hombroich:www.inselhombroich.de
日本の食品小売業界で働いた後、2014年に渡独。ハレ、ハンブルク、ボーフムと移り住み、現在はデュッセルドルフに夫と2人の娘と暮らす。趣味はオーガニックスーパーめぐり。
Instagram:@momococo_relife



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