秋の終わりの澄み切った青空のもと、11月12日に創立600周年を迎えたロストック大学。街の中心の優美な大学本校舎から、まさに600年前のこの日に始まりを迎えた場所である聖マリエン教会までパレードが行われました。パレードには、ロストック大学神学部を卒業された前ドイツ大統領ヨアヒム・ガウク氏もいらっしゃいました。
記念パレードの始まりを大学本校舎で待つ人々
バルト海地域で最初に創立されたロストック大学は「北の光」とも呼ばれていて、ハイデルベルク、ケルン、エアフルト、ヴュルツブルク、ライプツィヒに次いでドイツ国内では6番目に古い大学です。例えば、同じ北ドイツのロストックよりもはるかに有名なハンザ同盟都市のハンブルク大学は今年で100周年、リューベック大学は55周年であり、ロストック大学の歴史がいかに長いかが分かります。
まるで宮殿のような講堂
さて、ここで観光ガイドとして皆さんに大いにご紹介したいのが、ロストック大学本校舎。街のど真ん中、その名も「大学広場(Universitätplatz)」にある本校舎は、19世紀後半に建てられました。ネオルネッサンス様式の建物は象牙色とテラコッタ装飾のコントラストがとても美しく、どこか貴族的な印象を持ちます。それもそのはず、この校舎は、ドイツ北東地方メクレンブルク= フォアポンメルン州が誇る「湖上の宝石」こと、シュヴェリーン城の19世紀の大増改築プロジェクトチームによって手掛けられたのです。
装飾の美しい正面外壁
「ロストックとシュヴェリーン城にどういう関係が?」と疑問を持たれる方もいるかと思いますが、実はロストック市が制定された13世紀初頭から、この地はシュヴェリーン城を居城とするメクレンブルク家の支配下にありました。つまり、メクレンブルク家の後ろ盾なくしてロストック大学設立は無かったといっても過言ではありません。このような史実を踏まえた上で大学本校舎の外壁を眺めてみると、メクレンブルク家の紋章を筆頭に、創立時と本校舎建設時の4名の当主、主要な学者陣、そして15世紀大学創立時のロストック市長らの堂々たる全身像や頭像を確認できます。
ここで気が付くのが、学問の象徴として数体の女性像はあるものの、それ以外の実在の人物の彫刻像はすべて男性であるということ。実は600年の歴史があるロストック大学も、女性に最初に門戸を開いたのは約100年前。しかし、これからの女性の台頭を象徴するかのように、これまで節目のパレードで先導の役割は男性だけとされていたのが、今年は男女等しい人数の先導役によって行われました。
創立当初200名だった学生数は、現在では1万3000人。日本からも10名弱の方が学んでいます。ロストック大学はこれからも成長を続けていくことでしょう。
ロストック在住。ドイツ北東地方の案内人、そしてシュヴェリーン城公認ガイド。ツイッターで観光、街、大好きなビールについて、ほぼ毎日つぶやいています。
Twitter:@rostock_jp
griffin-guides.com